【活動報告】高校生が福祉を伝える!高校生が藤沢市内の障がい福祉を取材し、共生社会のあり方を考える(1回目)

今年も神奈川県立藤沢清流高校とのコラボレーションが始まります。
「社会福祉基礎」の授業を履修している12名の高校3年生が対象です。共生社会について考える座学をはじめ、高校生自身がテーマを決めて藤沢市内の障がい福祉を取材し、「Ana Letter」を通して発信していきます。
※昨年度の様子はこちらから(1回目、2回目、3回目、生徒インタビュー①、生徒インタビュー②、生徒インタビュー③、生徒インタビュー④)
藤沢清流高校とのコラボレーション
藤沢清流高校には自由選択科目「社会福祉基礎」があり、生徒自らが福祉に関心を抱き、学習できる環境が整っています。今年度「社会福祉基礎」の授業を3日間いただき、藤沢の福祉や共生社会のあり方を考える講義、藤沢市内の障がい福祉に関わる方へのインタビュー、Ana Letterの記事を作成し情報発信をおこなっていきます。
この取組みは、次世代を担う高校生自らが藤沢の福祉に関心を抱き、高校生の視点で障がい福祉を捉え、高校生の言葉で発信していくことを大切にしています。また、これを機に、藤沢清流高校の生徒たちが藤沢市とさらにつながってくれたらと願っています。
全体の流れ
この授業は、以下のように、1日2コマ、全3回で実施します。
・第1回[2025年5月22日(木)]
ゲームを用いながら、合理的配慮や共生社会のあり方を考えるきっかけづくりをおこなう。10月におこなうインタビューに向けて、藤沢の福祉や取材の心得についても授業の中で触れていく。
・第2回[2025年10月]
藤沢市内で障がい福祉に関わる方を中心にインタビューにご協力いただき、学校内で生徒自らが各々作成した質問項目をもとにインタビューをおこなう。(予定)
・第3回[2025年10月]
インタビュー内容をもとに記事を完成させて、生徒自身が抱く地域福祉や共生社会についての考えを伝える。(予定)
1回目の様子を紹介!
授業の内容
使用したスライドの一部を紹介します。また、授業の中では共生社会に近づくゲーム「ワンダーワールドツアー」をおこないました。生徒たちは、ゲームが始まると笑いあい、声を掛け合い、助け合い、さまざまな工夫をしていました。
このゲームは(詳細は下記)、参加者がいろいろな特徴をもった人になりきり、協力し合います。特徴を見ると「助けてもらう立場」のように思えますが、同時に「助ける立場」でもあります。その体験を通して、本質的な「助け合う」を体感できているようでした。
前半
c7763814ba4da8b6d8e8747a63141465後半
aec745c814d7dd7b3a4ee8e25cc1284fワンダーワールドツアー
共生社会に近づくゲーム「ワンダーワールドツアー」を授業で使用しました。「ワンダーワールドツアー」は、共生社会の実現に向けて、いろいろな特徴をもった旅行者になりきり、多様なメンバーと一緒に時間内にミッションをクリアするゲームです。
詳細は公式サイトをご覧ください。
ワンダーワールドツアー
「ワンダーワールドツアー」をやってみて、どうだった?
初めて、ワンダーワールドツアーをやってみて、制限時間よりも長くても楽しいのかなと思いました。他にも、今回はゲームで「みぶりてぶりの旅行者」「小さい4歳の旅行者」、「小指使いの旅行者」、「機会を求め旅行者」でやったのですが、小指しか使えなくても、時間が経つと慣れてきたり、カードを渡せるようになったので、指が不自由な人も次第に慣れていくこともあるのかなと思いました。また、今回のゲームをやって、何か不自由がある人でもみんなで協力していけるような社会になるといいと思いました。
初めてこのゲームをやったし、初めてこのゲームを知った。今回、旅行者カードで「小指しか使えない」状態になり、カード1枚取るのも苦労したし、ジャンケンするとき、手だとグーしか出せないから、こういう小さなことでも周りの人たちとのコミュニケーションや工夫が必要になるんだなということが分かった。意外とワクワク楽しくできて良かった。
カードゲームの面白さを感じながらも、思い出カードでしっかりと福祉について学んだり、みんなと協力するのがとても楽しかったです。とくに印象に残ったのは、みんなで手話で「こんにちは」をしたことで、楽しみながら手話も覚えられるのはとても良いなと思ったし、私の班には目が見えない人がいて、サポートもたくさんして、いろいろなことを学びました。
目が見えない人がいると、何が起きているのかを付き添って教えないとなかなか伝わらないのが大変だと思ったし、本人も何が起きているのか分からなくて大変そうだった。自分は手札を2枚から始める人で、ミッションカードを引かないとなかなかカードを増やせなかったから大変だった。
自分は目が見えないという状況でゲームをしました。いつもはあたりまえに見ている景色を、音だけで楽しむのは難しかったです。周りが「当たり」のカードを引いて盛り上がっていても、自分には見えないので、何で楽しんでいるのか分からなかったです。感情の共有が難しかったです。
自分の役割は「声が出せない人」で、読んでほしいときに肩を叩いたり、ジェスチャーで伝えることが想像よりも難しかったけど、メンバーが読み取ってくれたときは、安心感と嬉しさがあって良かった。
自分が引いたカードは「4歳児」で、文字も読めなければ、遠いところに手も届かないという、不自由な条件を持っていました。他の人も声が出せなかったり、小指しか使えなくて手が不自由だったり、さまざまありましたが、そのなかでもみんなで工夫して協力を行い、良い感じに進めることができました。最後的にはクリアできなかったけれど、人と協力するのが大切なのだと知りました。
パーティーゲームとして、とても楽しいと思う。人によってできること、できないことがあるのも、システムとして面白いし、何かしらできないことがある人でも、ほかの面では他人を助けられることを体感できて、これを両立できたのはシンプルにすごいと思う。また、これ自体が老若男女、誰でも遊びやすいこともあり、どんな人にも分かりやすく伝える方法としてかなりいいと思う。
子どもの役をやったのですが、思ったより何も出来なくてたくさん助けてもらったので、実際に小さな子はこのぐらい大人が付き添わないといけないのだなと分かりました。ゲーム自体はクリア出来なかったのですが、班のみんなで協力できて楽しかったし、ちょっとした絆が生まれた感じがしました。すごく面白かったので、またやりたいなと思いました。
難しかったけど結構楽しかったです。自分のやった役は結構何でもできる役だったので、あまり大変ではなかったのですが、小指しか使えなかったり、話せなかったり、まだ小さくて喋れなかったり、さまざまな人がいて、この世の中にも本当にいろいろな人がいるのだなと改めて実感しました。今回やった役だけでなく、もっといろいろな役でまたこのゲームをやりたいなと思いました。
今回、このゲームをやってみて学んだことは、協力をする大切さです。自分はあまり不自由なくゲームができてカードも揃えられたけど、音だけで理解する人がいたから終始手伝いました。今回は誰かができていないとクリアができないという設定だったので、率先して手伝えたと思いますが、現実世界でも、不自由な人を助けられたら良いと思いました。
ワンダーワールドツアーは、一人ひとり違った制限があり、それに応じて助ける方法や席を変えてやりやすくする工夫がとてもできるゲームだと感じました。たとえば、言葉を話せない人がいたら、その人の代わりに読んであげたり、ほかの人にも分かりやすく伝えたりという手助けが必要です。ほかには、子どもの役の人がいたら漢字が読めない人もいるから、そこでも手助けが必要だとこの授業で感じました。
共生社会をつくっていくために
生徒たちは、心のバリアフリーに関する講義や「ワンダーワールドツアー」を体験し、いろいろな特徴のある人たちがともに生きるためには何が大切かを考えてくれました。
ともに生きるために大切だと思うことは?
いろいろな人が協力し合えて、いろいろな人がしっかりと意識をもつことが大切。また、しっかりと相手の言葉を聞いて動くことが大切。
相手が何を考えているか、何に困っているかを考えるのはすごくいいことだなと思った。だけど、相手がこうだから(たとえば、腕がないから、目が見えないから)きっと、こう思っているよね?と考えるのは違うと思うから、みんなの意識が何より大切だなと思った。
目が見えない人が盲導犬を連れてレストランに行くとき、レストランで食べている人に犬アレルギーの方がいても、目が見えない人がレストランに入れないのではなく、テラス席に座ったり、もっと工夫をしてお互いに支え合うのが大切だと思いました。
障がいを持っている人も持っていない人も、全員同じ人なのだと理解することも大事だけど、それだけでなくて、自分のできることとできないことを把握して、お互いに助け合いをしていくことが共生社会をつくっていくために大切だと思った。
もちろん、みんながお互いを受け入れて優しい社会をつくることが大切。けれど、人それぞれ考えていることが違ってしまうのは当たり前だし、仕方のないことだと思う。そこで、一番必要なのは、受け身になるのではなく、自ら発信していくことだと思いました。
身体の不自由な方や障がい者の人のことを自分の価値観で決めつけないことが大切だと思う。自分のやり方やペース、ルーティンがあったりすると、優しさのつもりでおこなったことが、逆に嫌な気持ちにさせてしまうこともあるためである。
相手の話をよく聞き、よく話し合うこと
一言で言うと、互いに尊重しあうこと。あの人はそれができないから、これが苦手だから、全部自分がやってあげなきゃ!ではなく、あの人はあれはできなくても、これは得意だから任せようといったように、互いに得手不得手がある人間であることを踏まえ、持ちつ持たれつの関係を大事にしていくのが大切だと思います。
世間でいう「普通」の私たちが、障がい者に対する意識を変えていかないといけないなと思いました。自分はもちろん周りも、その意識を変えていくことから始めていけば、少しは変わるのかなと思うので、困っている人を見つけたら積極的に声をかけて助けられるようにしたいなと思います。
お互いがお互いを尊重し、ちゃんと差別することなく、コミュニケーションを取ることがとても大事ということが分かりました。たとえば、点字ブロックで困っている人がいて、助けないで見て見ぬふりをしたり、誰かが助けてくれるだろうという気持ちを捨てて、もっと自分から積極的に助け合っていきたいなと思いました。
共生社会をつくっていくうえで大事なことは、バリアフリーやマナーだと思いました。たとえば、点字ブロックがいろいろなところにあったり、エレベーターのボタンが低い位置にあることです。しかし、点字ブロックの上に荷物を置いてしまうと意味がありません。点字ブロックを歩く人にとって邪魔にならないようにするのがとても大事だと思いました。
共生社会をつくっていくためには、障がいのある人たちを特別な人たちと思わず、平等に接し、社会モデルの考え方が増えていくことが大切だと感じました。障がいのある人は特別扱いされるのが嫌な人も多く、「みんなと同じ人なのに」と悩んでしまうことも多いと思います。壁をつくらず、平等に関わることで、ともに助け合い共生できる社会になると思いました。たとえば、車いすに乗っている人がいたとしても、それを見て「障がいを持っているのは、その人の責任だからリハビリをして階段を上がるしかない」と考えるのではなく、「ここを斜めの上り坂にすればあがりやすいか〜」と、社会の環境に目を向けてみることで、よりよい社会がつくれると思いました。
授業の感想
●今日の授業で、不自由な人同士でも協力していくと楽しくできることを学びました。不自由があるからといって、何でもこっちがやるのではなく、できることはやってもらい、できないところをサポートするのが大事だと分かりました。また時間があったらやりたいです。すごく分かりやすくて、学びになる遊びでした。
●「Ana Letter」というもの自体、初めて知った団体だから、興味深かった。みんなが楽しく、幸福に過ごせる社会になるといいなと思った。ゲームもやってみると意外と楽しかったし、たくさん考えさせられたから、すごくいいゲームだと思った。
●福祉基礎を受けていると前までは見えなかったものが見えたり、視野が広がったと気がします。この間も車いすの方がトイレにいて、なかなか立てなそうにしていたのを見て「車いす、最近学んだし、サポートできるかも」と思い、声をかけました。そのときは「大丈夫」と言われましたが、とても感謝されました。前の自分だったら声をかけられていないし、授業を重ねるごとに助けることが多くなりました。
●「障がいは社会の中にある」という考え方が素晴らしいと思った。「障がい」というと、目が見えない人、精神に疾病がある人など、その人の身体とか心の状態に目が行きがちだけど、この考え方だと障がいになるのはエレベーターのボタンが高いとか、段差があるとか、障害物があることで「障がい」としているから、障がいがある人もいない人も、全員が同じ人なのだと受け入れやすくなる考えで、この考え方がもっと広がってほしいと思った。
●障がい者の方と接するときに、こちらが良かれと思ってやること、言うことが相手にとってはマイナスの要素だったりすることがある。自分も相手も、互いに思って行動してもそれが裏目に出てしまったりなど。大切なのは、互いに自分の気持ちを共有することだと思いました。共有の仕方は、人それぞれで、それを理解し受け入れることが大切。
●実際に役割を決めてゲームをしたりすることで、少しでも障がいをもっている人の気持ちを体験する(感じる)ことができて良かった。また、「障がいのある人」が「かわいそうな人」という認識をするのは違うことを学べて良かった。
●小川優さんの話を聞いて、たしかに社会福祉の仕事があるのは知っていても、詳しいことは知らないなと思った。「Ana Letter」によって、いろいろな人がインタビューを通して、みんなが知らないことや詳しい内容を知れるのは素晴らしいと思った。
●今回の授業では共生社会について新たな学びを得られたと思う。前半では障がいのある人と共に生きていくうえで壁となっている、いわゆるバリアについて学びました。自分にとって、とくに納得めいたものは、過度な同情もバリアに含まれるというものです。今までは、障がいがある人は何かしら困っているという意識がありましたが、言われてみれば、困ってもないのに、あれこれ口を出されるのは確かに不快だし、新たな視点を得られたと思います。
●ワンダーワールドツアーをやってすごく難しかったので、子どもや不自由がある人を見かけたら積極的に助けられるようにしたいなと思いました。不自由な人はこんなに大変なのだなと感じられたので、このゲームが売っているなら買って、友だちとかとやりたいなと思いました。
●今日、小川さんから話を聞いて、初めて聞くことも多く、とても勉強になりました。初めてワンダーワールドツアーというゲームをして、この世界にはさまざまな人がいることが分かりました。これからは、もっと周りを見て、もっと考えて行動していきたいと思いました。また、障がい者の方に対しても偏見や差別などをなくし、もっとみんなが過ごしやすい環境にしていきたいと強く思いました。
●今日の授業では障がいについて考え、教わりました。「足がないのが障がい」や「腕がないのが障がい」ではなく、坂がないのが障がいなど、自分の持っていたイメージや考え方が変わったので良かったと思いました。そして、ゲームをやるなかで、障がいの体験をして学び、楽しくできたのも良かったです。
●今回の授業を受けてみて、障がいというのは別に特別なことではなく、自分たちもいつなるか分からないものでもあるから、平等に接することがとても大切なのだと考えました。前まで普通に身体の異常がなかった人が突然なってしまって、身体が思うように動かないし、ほかの人からの視線で「障がいを持っているから見た目がどう思われているか怖い」と不安になってしまう人も多いと思います。ですが、偏見をなくし、同じ人間なのだから手を取って助け合うことができれば、よい社会になっていくのだと、今日の授業を通して学ぶことができました。
今後の予定
生徒たちの感想を読むと、2コマの授業からさまざまなことを吸収してくれたのを感じます。「ともに生きる社会をつくるために大切なこと」は最後の授業のあとにも伺います。毎年、変化がとても素敵で楽しいのです。ぜひ、皆さんも楽しみにしていてください。
次回は、10月に2コマ×2回の授業をおこなう予定です。その中で、インタビューと記事作成をおこないます。生徒たちは現在「誰にインタビューをしたいか」を考えてくれています。
その内容に応じて、Ana Letterでは協力してくださる方を探していきたいと思っています。「高校生が福祉を伝える!」にご協力いただける方々、ぜひ、よろしくお願いいたします。