学生記者が紡いだ「等身大の言葉」。ふじさわこたね 第1期 成果発表会

3月29日(日)、藤沢市社会福祉協議会にて「ふじさわこたね」第1期成果発表会を開催しました。
昨年7月にスタートしたこの学生記者プロジェクト。第1期の集大成であるこの成果発表会の開催と、記念冊子の制作、そして次期へバトンをつなぐ活動資金のために実施したクラウドファンディングでは、41名の方々に温かいご支援をいただきました。会場には、学生のご家族や支援者の皆さまをはじめ、地域の福祉関係者、学校関係者、さらには地元メディアの記事を見て足を運んでくださった一般の方々の姿もありました。
世代や背景の異なる皆さんが、学生たちの率直な言葉に耳を傾けてくださる。そんな温かい空気の中で、発表会がスタートしました。
第1部:等身大の言葉で語る「私の変化」
発表を行ったのは、高校1年生から大学1年生までの5名の学生たちです。彼らにお願いしたプレゼンのテーマは「ふじさわこたねの活動に参加してからの変化」。そして発表方法は、学生自身に「自分が一番発表しやすいスタイル」を選んでもらいました。自作のスライドを使ったプレゼン、用意した原稿の朗読、そして私(小川)との対談形式など、スタイルはさまざまです。
半年間、現場へ足を運び、悩みながら記事を書き上げる中で、彼らの内側で何がどう変わったのか。型にはめないスタイルだからこそ、自分の頭で考えてまとめた言葉が、飾らない等身大の「本音」としてまっすぐに伝わってきました。
■ 「福祉はスライムだ」佐藤 晴(大1)
当日、残念ながら体調不良で欠席となった晴くんですが、事後アンケートで力強い言葉を寄せてくれました。「他の記事と被らない自分らしさの出し方」に悩み、10時間かけて記事を書き上げたという彼。
「福祉は決められた部屋に振り分けられるものではなく、水やスライムのように柔軟で、その人にあった型になれるものだと感じた」。この言葉には、福祉の本質があります。直接会えずとも仲間の記事から刺激をもらっていたという、彼なりの温かいつながりも教えてくれました。
■ 出会いの中で見つけた「自分の軸」野元 小暖(高3)
受験生でありながらリーダーとして走り抜けた小暖さんは、「自分の記事がどう伝わっているか不安もあったが、活動を通して出会った大人たちの熱い想いに触れ、自分の中で大切にしたい『軸』を見つけることができた」と振り返ります。
言葉で発信する責任の重さを知り、記者の方々へのリスペクトが深まったという彼女の眼差しは、春からの新生活へ向けて力強く輝いていました。
■ 「楽しい」が大きな自信に変わった日 小島 若菜(高2)
「最初は文章を書くことにも、人と話すことにも苦戦した」と明かす若菜さん。しかし、取材現場で利用者の方々とフラットに語り合う中で、「自分の言葉で伝える楽しさ」に気づいたと言います。
「今日、直接『良かったよ』と声をかけていただけたことが何よりの喜び。障がいがあるとか関係なく、ともに生きていく大切さを学べた」。将来は心理士になりたいという彼女にとって、かけがえのない経験を得る半年間でした。
■ 知らない世界の奥行きを知る 福田 健太(高1)
点字図書館の取材で、なんと5時間も滞在して全身で現場を感じ取った健太くん。「てっきり目は見えないものだと思っていたけれど、人によって見え方も最適なサポートも違う。福祉は難しい顔をして行うものだけではなく、笑顔や遊びの中にこそ大切なヒントがある」。
遠いものだと感じていた福祉が、実はとても身近な存在だったと語る彼の言葉には、現場を歩いた人間ならではの強い説得力がありました。
■ 客観的な視点で育んだ「自己愛」 飯島 咲音(高1)
最初は「ただの感想文」しか書けず悩んでいたという咲音さん。しかし、自ら記事の書き方を研究し、構成を考え抜くことで壁を乗り越えました。
「自分の書いた記事を褒めてもらうことで、客観的な視点で『自分、頑張ってるじゃん!』と認めてあげられるようになりました。自己愛が育ったことは、私にとって何よりの成長です」。堂々と胸を張る姿に、会場からは多くの拍手が送られました。
会場の大人たちの心を揺さぶった「学生の力」
彼らの等身大の言葉、そして自分に合ったスタイルで緊張しながらも語る姿は、会場の大人たちに確かな「気づき」と「希望」を届けてくれました。終了後の来場者アンケートには、熱のこもった声が溢れていました。
「それぞれが発表したい形式で発表しているのがよかったです。型にはめず、一人ひとりの学生の良さを活かした発表でした。(中略)学生が、自分の成長を感じて、自分ってすごい!と言えることはとても大切な時間だと思いました」(教育関係)
「学生さんたちが、体験を通して、社会や意識のバリア、当たり前ではない支えに気づき、主体的に活動しようとしている姿に頼もしさを感じました。これからの日本が楽しみですね!」(一般参加)
「色々ありますが、とくにご家族に障がいのある方がいると話す高校生が、『深く考えていなかったが、一人ひとりが尊重されているあたたかい場所に出会えたことが嬉しかった』と話されたこと。質疑応答では、こたねさんが、まっすぐ話し手の方を向いて、聞き漏らさないようにしていらしたのが残っています」(地域活動関係)
第2部:プロから学ぶ「伝えること」の覚悟
感動のプレゼンの後は、地域メディアとして活躍される磯谷拓さん(タウンニュース社)と三浦悠介さん(湘南経済新聞)をお招きしたメディアトークと、学生の悩みに答える「公開編集会議」が行われました。
ローカルメディアは「地域をつなぐ」ハブになる
前半のトークでは、お二人が日々どんな想いで地域を歩き、ローカルメディアの「価値」をどう捉えているのかが語られました。
「メディアは、普段なら聞けないような人の心の内を聞くためのフリーパスを持っている」と語る三浦さん。磯谷さんも「名刺一つあれば誰にでも声をかけられる。隣のおじいさんが実はすごい人だった、という日常に光を当てるのが喜び」と、この仕事ならではの醍醐味を語ります。
さらに話題は、メディアが担う「地域づくり」の価値へと深まっていきました。
磯谷さんが「地域の課題解決を発信することは、全国で同じ悩みを抱える人をつなぐきっかけになる」と言及すれば、三浦さんは「誰かの言葉を丁寧に聞き取り、発信することは、この街の歴史を後世につなぐことになる」と続けます。情報をただ届けるだけでなく、取材という行為そのものが地域の人々の存在を肯定し、新たなつながりを生んでいく。ローカルメディアが、まちをあたたかくする「ハブ」として機能していることが伝わる時間となりました。
公開編集会議!プロが教える「伝える極意」
後半は、半年間「書くこと」の壁にぶつかってきた学生たちからの質問タイム。「記事を書くのに時間がかかってしまう」「どうやったらもっと上手く書けますか?」という切実な悩みに、プロのお二人が全力で応えてくれました。
極意1:記事は「中華料理」、準備が8割!
磯谷さんは記事づくりを料理に例え、「チャーハンがすぐに出てくるのは、事前にネギやチャーシューを切って準備しているから。現場に行く前に、頭の中で8割方記事の構成を作っておくことがスピードの秘訣」とアドバイス。
極意2:相手に「今日会えて嬉しい」を全身で伝える
三浦さんは「本当に今日お話が聞けて嬉しい!という本心を、前のめりに聞く姿勢や頷き(傾聴)で相手に伝えること」の重要性を説きました。磯谷さんも「イエスノーで答えられる質問はしないこと」と実践的なテクニックを伝授。
極意3:AIに頼らず「自分だけの3つの質問」を探す
「AIに質問を10個考えさせると、みんなが思いつく普通の10個になる。そこから、自分にしか聞けない『価値ある3つ』を考えて現場に持っていくことが、これからの時代に求められる力」という磯谷さんの言葉は、会場にも気づきを届けました。
極意4:「俳句」のように事実を切り取る訓練
文章が苦手という学生に対し、三浦さんから「俳句を作ってみる」というユニークな提案が。「感情を過剰に入れすぎず、目で見た事実を5・7・5の短い言葉で写実する訓練は、ニュースを書く基礎になる」とエールを送りました。
会場の大人たちも唸った「プロの矜持」
学生たちの真っ直ぐな質問と、それに対してご自身の経験から丁寧に言葉を返すお二人。その誠実なやり取りは、客席で見守っていた参加者の皆さんにとっても、多くの気づきが詰まった時間となりました。
「学生さんたちと同じ気持ちでゲストの方々のお話を新鮮に聞くことができました。『書くことは料理と同じ』『俳句』などなど、自分と向き合うヒントがたくさん詰まっていると感じました」(一般参加)
「大変勉強になりました。人と人とのつながりや、情報をどう伝えるか、AIではなく、自分なりの言葉や方法を見つけ出すことは継続していきたいと思えました」(教育関係)
「こたねの皆さん、臆せず素朴に質問される様子がうれしくなりました。それに対して、メディアのお二人は流石に先輩として、素敵な後押しと温かい受け答えが具体的で、印象的でした」(地域活動関係)
取材のノウハウにとどまらず、「人と向き合うとはどういうことか」という問いを会場の皆さんと分かち合えたような、温かく濃密な時間となりました。
第3部:福祉を、福祉の世界で閉じ込めないために
最後は、私から次年度に向けた「新構想」をお話しさせていただきました。キーワードは、「網の目状のつながり」です。
地域から取材先を募る「自薦・他薦システム」の導入や、取材先同士が横に手をつなぐ「こたねパートナー」という仕組み。学生がハブとなって、福祉を「福祉の世界」だけに閉じ込めず、地域全体を柔らかく耕していく。そんな決意を込めたこれからの構想を、会場の皆さんと共有しました。
この構想に対し、参加者の方からいただいたアンケートの言葉が、私たちの背中を強く押してくれました。
「福祉を『福祉の世界に閉じ込めない』、同感です。多様なひとの日常に触れ、考える。そんな機会はたくさんあるはずなのに、社会のシステムがいつの間にか福祉を特別なものにして、意識の壁を生み出している気がします。学生さんたちの活動から、自然とそのことに気づく人が増えるといいなと思います」(一般参加)
成果発表会という場を得たことで、学生たちの頑張りは、より一層の輝きを放ち、多くの人の心に届いたように感じます。
かつて教員だった頃、3月という節目には、1年間の生徒たちの確かな成長を振り返り、震えるほどの喜びと感動を覚えていました。退職後、あの独特な高揚感はどこか遠いものになっていましたが、今回の学生たちの姿を見て、私はもう一度、あの頃と同じ喜びを知ることができました。学生たちは計り知れない伸び代を持っている。
1期生の学生たちは「卒業」ではなく、なんと全員が「来年もふじさわこたねの活動を続けたい」と言ってくれています。クラウドファンディングで皆さまに支えていただいたおかげで、次年度はさらに多くの学生を迎え、新しい一歩を踏み出すことができそうです。
学生たちの蒔いた言葉の種が、優しく柔らかい社会をつくる力になると信じて。彼らの挑戦に伴走し、その成長を輝かせる場をともにつくってくださった全ての皆さまに、心より感謝申し上げます。
ふじさわこたねの挑戦は、ここから第2期へと続いていきます!

▼ ふじさわこたね1期生が執筆した記事はこちら!
▼【まもなく公開】第2期生&こたねパートナー大募集!
網の目状のつながりを作る「新構想」の仕組みや、エントリーの詳細については、次回の記事でたっぷりと発表いたします!一緒に社会を柔らかくする仲間に出会えることを楽しみにしています。


























