コラム

むぎむぎ通信 vol.4「なんとなくマイルド」

代表が書くコラム、柔らかく紡ぐ「むぎむぎ通信」です。

昨夜、暗い寝室で、娘は助けを求めるように泣きました。何が起きたのかというと、娘は生後3ヶ月からベビーベッドではなく、大人のベッドで一緒に寝るようになりました。そして、ついに私の腰が限界を迎えたのです。

寝返りを打てない姿勢を続けて、およそ2ヶ月…「これはいかん」と添い寝を終了しようと試みたのでした。本人にとっては理由もわからず、いつも隣にいたパパとママは見えず、温かいぬくもりもなくなり…どこに行っちゃったの?!と、それは泣きますよね。

最初は「あう?」「うー?」と尋ねるような声で呼び、だんだんとその声が大きくなり、堪えきれずに大泣き。慣れるのを待とうとはとても思えず、数分で「添い寝終了」を終了しました。

さて、「添い寝」の話題を出しましたが、文章の内容以上に「え?添い寝しているの?」「育児の知識ないの?」と感じた人はどのくらいいるでしょうか。これは年代にもよるかもしれません。

「添い寝は赤ちゃんが窒息してしまう危険性があるからやめたほうがいい」、そう育児書にも書いてあり、最近のInstagramでは多くのママたちが「こんな寝かせ方はNG!」と紹介してくれています。

我が家の場合、娘が3ヶ月になった頃に熱を出し、救急外来のお世話になりました。夜間も咳が止まらず、仰向けのまま吐いてしまうこともしばしばあり、隣にいてくれたほうが安心できるので添い寝を試みました。そこから数ヶ月、娘は添い寝が大好きになり、嬉しそうにくっついて5分ほどで毎晩寝るようになりました。

この経緯を聞くと、絶対NG派の人も「なんだ、事情があったんだ」と少しマイルドに捉えてもらえるのではないかと思います。

ここで念のため書きますが、低月齢の子との添い寝は確かにリスクがあるので、育児書などの情報が間違っているということを書きたいわけではありません。私自身も、娘の体調不良がなければ、生後3ヶ月で添い寝という選択はできなかったように思います。

では、このような場面はどうでしょうか。もし、小学校の先生をしていて、クラスの児童が遠足のお弁当に白米だけ持ってきたとしたら、何を想像しますか?

考えられる理由は無数にあります。うっかりおかずを家に忘れたのかもしれませんし、経済的理由があるのかもしれません。はたまた、お弁当箱では白米しか食べないというこだわりがあるのかもしれなければ、しつけが厳しすぎる、虐待の疑いがあるかもしれません。

私たちは自分の経験や常識から、つい理由を決めつけ、意見に強さが増してしまうことがあります。「白米だけしか持たせないなんて可哀想」と言った先に、周りの目を不安に思いつつも本人のこだわりを大切にして、お弁当を用意した保護者がいるかもしれません。

社会には「正解」と「不正解」が散りばめられています。これは、長い年月をかけて、人々が生きやすさを求めた結果なのかなとも感じます。「正解」「不正解」があったほうが判断しやすく、正解を選べていると安心するのだと思います。

しかし、本当は、社会のなかにある多くのものは「どちらも正解」であることがほとんどです。そして、そこには、その答えを選んだ理由や事情があります。

どうしたら、みんなで生きやすく生きられるのか。自分とは異なる答えをもつ相手に対して、「それは間違っているよ」という発想をもつのをやめることが一歩になるように思います。

「私は正解、あなたは不正解」という発想から逃れられないときは、理由を聞いてみるのもいいかもしれません。私たちは理由を知ると、異なる答えを出す相手に対して、なんとなくマイルドになれるものです。お互いの意見を変える必要もなく、お互いの正解に対して「なんとなくマイルド」になれることが大切なのではと感じています。

人の表情や言動にも、計り知れない理由や事情が隠れていることがあります。「朝からたるんでいるな」と思う部下は、昨夜、大切な彼女とお別れをしたのかもしれません。そもそも「朝からシャキッとする」という文化がないのかもしれません。

すべての理由や事情を知る必要はないけれど、いろいろな計り知れない背景があるのかもと思うだけで、「なんとなくマイルド」になれるものです。そう生きたほうが楽になれるのではないでしょうか。

合理的配慮の提供が昨年4月から義務化されました。従来の「正解」「不正解」、「OK」「NG」ではない選択を、誰もが求めてよい時代がやってきています。対話が勧められ、お互いの事情を知ることができるようになりました。1年が経ち、どれだけの人がグラデーションのある答えを選べるようになったでしょうか。

障がいのアナでは、合理的配慮や共生社会についての講演もおこなっています。正解を求めて生きやすくなった時代から、どちらも正解という発想でもっと生きやすくなれる時代へ。みんなでがんばっていきましょう!

参考記事

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WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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