コラム

【活動報告】横浜瀬谷高校「視覚障がいを知る」(ゲスト講師:赤間俊明さん、中野健士さん)

神奈川ワークショップの赤間さん、中野さんと、横浜瀬谷高校2年生、共生社会プロジェクトのメンバーたち。

神奈川県立横浜瀬谷高校と共生社会プロジェクトをおこなっています。

2月5日(月)は、神奈川ワークショップの赤間俊明さんと中野健士さんにゲスト講師として来ていただきました

これまでの授業の様子:11/271/151/221/29

横浜瀬谷高校とのコラボレーション

横浜瀬谷高校の2年生は「総合的な探究の時間」のなかで16プロジェクトに分かれ、探究学習を進めています。共生社会プロジェクトには14名の生徒が参加し、多くの人が暮らしやすい地域を目指して、共生社会について学んでいます。

障がいのアナは、そのプロジェクトの一部をお手伝いしています。生徒たちに新しい気づきと考える力を養ってもらえるよう、楽しい授業をつくっていきたいと考えています

授業の内容

今回は、藤沢市獺郷にある神奈川ワークショップ(社会福祉法人 光友会)の赤間俊明さんと所長の中野健士さんにゲスト講師をお願いしました。赤間俊明さんは、糖尿病の合併症で、24歳のときに視覚障がいとなりました。

授業の内容は、【ミニ講演】、【視覚障がいを体験】、【振り返り・質問タイム】です。

ミニ講演

おふたりから、視覚障がいの種類や特徴、実際のエピソードを紹介してもらいました

中野健士さんは、プリントを配布し、視覚障がいの特徴を説明。私たちの生活は「視覚」から入る情報が多いことを教えてもらいました。

音が鳴らない信号、「あっち、こっち」という表現など、わかりにくい場面を具体的に教えてもらいました。

赤間俊明さんは、全盲になった背景や実際の見え方、暮らしのなかの困りごとや嫌だったエピソードも教えてもらいました

多くの具体例を紹介してもらい、徐々に、どういう状況で大変さがあるのかを想像できるようになりました。また、点字ブロックへの意識など、私たちの行動がバリアを増やしたり、心ない言葉につながったりすることも実感できました。

技術の進歩や習慣、ご本人の工夫で、視覚障がいが大きな障がいとならず、生活できることを知りました。しかし、難しい場面も多々あります。周りにいる人が表情や様子を見て、「お手伝いしましょうか」と声をかけることも大切であると学びました。

視覚障がいを体験

授業の後半は、視覚障がいを体験してもらいました

まずは、教室内でアイマスクをして、自分の席まで歩いて戻る体験。しっかりと目で見て、頭のなかで地図をつくって歩きましたが、それでも、元の席に戻るのが難しかったです。白杖を使わせてもらう体験もしました。

次は、二人一組になり、1階から2階に上がり、再び、1階に戻る体験。介助をする側は、段差や階段の存在など、空間をイメージができるような声掛けをして誘導しました。

体験中、「目の前に崖があるみたいで、歩いているだけで怖い」と話している生徒もいました。

体験後には、「下りの階段が怖かった」「普段通っているところでも見えないだけで、怖かった」「壁を触ってないと怖い」「まっすぐ歩いているつもりでもまっすぐ歩けない」「横幅がわからなかった」などの感想がありました。

振り返り・質問タイム

質問タイムでは、多くの質問が出ました。体験する授業を通して、生徒のなかでも多くの質問が生まれてきているのだと嬉しく思いました。

具体的な質問として、以下のような内容がありました。

  • 目が見えないと娯楽は少ないのか?
  • 目を瞑ると、私たちは黒以外の色も見えているが、それは見えるのか?
  • バイト先に盲導犬を連れてくる常連さんがいるが、どう対応したらいいのか?
  • 洋服はどう選んでいるのか?
  • 複雑な料理(食べ方が難しいなど)はどうやって食べるのか?
  • 道で視覚障がいの人とすれ違うときに、どのくらい離れたら迷惑にならないか?
  • 見たことのないもの、想像できないものはあるか?

赤間さんは、視覚障がいがあっても変わらないこと、特別扱いせず、普通に接してほしいと教えてくれました。目が見えなくても、テレビなどの娯楽を楽しみ、好きな洋服を着ます。

「点字ブロックはあったほうが良いけれど、それによって、つまづいてしまう人もいる。みんなで暮らす社会だから、視覚障がいに特化したバリアフリーではなく、危ないものがあれば教えてくれる、自然な声かけがある社会が理想」と話してくれたのも、印象的でした。

授業当日は、雪が積もる寒い日。こういう日は、白杖をつきながら傘を指すのは難しいので、声をかけてもらえると嬉しいと話してくれました。そのときの状況によって、困り感は変化します。相手の状況を想像し、自然と対話できる社会を目指していきたいですね

感じたこと・気づいたこと

生徒たちは、このような気づきを感想として寄せてくれました。感想の一部を紹介します。

大変。

見えないというのは自分の世界が狭まると、改めてわかった。

目の見えないというだけで、今までの活動のほぼ全てを制限されているように感じて、大変だと思った。

目が見えないことの怖さだったり、サポートする側の苦労を改めて実感できた。

校舎を歩いてみて段差(とくに下り)がとても怖くて、真っ直ぐな道でも恐怖があったので、一人で歩いている視覚障がい者の方はすごいなと感じました。

普段、私たちが通っているところでも、目が見えなくなるだけで階段が物凄く怖く感じたりしたので、より目が見えないことのつらさを感じた。

実際に体験談を聞いて、特別扱いする必要はないけれど、困ったことがあれば手を貸してあげることが必要だとわかった。

実際にアイマスクをつけて校内を歩いてみて、普段、普通に歩いている廊下も目からの情報がないことでとても不安だった。とくに階段などの段差や曲がり角では、一緒に歩く人が声掛けをすることが大切だと感じた。

慣れている場所でも徐々に自分がどこにいるのか分からなくなってしまうので、慣れない場所はどれほど恐いのだろうと思いました。

また、手すりがあるけれど、段差が1段先のところから始まっているなど、わずかな距離で立ち止まってしまう原因になったので、実際に体験してみることは大切なんだと感じました。科学技術が発達していることに驚きました。

視覚を遮って歩いていると、いつ壁に当たるのか、どこに階段があるのかがまったく分からず、ペアの補助がなければとても不安だった。

また、視覚障がい者の方の話を聞いて、道端でそういった障がい者と出会っても、過度に心配をして関わろうとするのではなく、適度に接してあげたほうが良いということを知った。

直線的な道でも、正しい向きが分からなくなるため、1人で歩くには相当の訓練が必要だとわかった。

また、階段を降りるときが1番怖かった。

今後に活かしていきたいこと

生徒たちは、このような想いを寄せてくれました。感想の一部を紹介します。

点字ブロックなどの上には乗らない。

目が見えない人だけでなく、障がいのある方と関わるときは、特別扱いするのはやめようと思った。

今後は、たとえば、目の見えない人への挨拶では、「○○さん、こんにちは」などの工夫が必要だと思った。

自分の家が、二俣川のライトセンターに近いので、視覚障がいのある方が困っているところを見つけたら、勇気を出してサポートしてあげたいと思った。

「何か特別扱いをするのではなく、普通に接してほしい」と話していらっしゃったので、障がい者の方を街で見かけても、特別扱いをするのではなく、普通に接していきたいと思いました。

障がいがあっても普段通りに接してほしいという思いを、今後も忘れないようにしたい。

実際に視覚障がいのある人が困っているように見えたら声をかけてみようと思った。音の鳴らない信号や天候が悪い日は、とくに歩きにくいと知ったから、周りの状況を考えて必要なときには声をかけるようにしたい。

また、点字ブロックの上で立ち止まったり、物が置かれていると視覚障がいのある方とぶつかってしまうことがあるから注意したいと思う。

意外と普段の生活は不便ではないと知り、今後は大袈裟に距離をとったり、声をかけたりせず、健常者と同じ距離感で、日常のなかで対応するように改めて心がけていきたいです。

もし、将来、視覚障がい者の人と関わることがあったら、過度な心配はせず、できるだけ普通の人と同じように接して、困っているなと思ったときに手助けしようと考えた。

信号待ちなど、特定の場面で助けが必要になることが分かったので、そのような場面で配慮できたら良いと思った。

授業にご協力いただきました、神奈川ワークショップの赤間俊明さん、中野健士さん、ありがとうございました!

4回の体験をもとに、今後の授業では、成果発表に向けての準備が始まります。

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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