コラム

【活動報告】横浜瀬谷高校「聴覚障がいを知る」(ゲスト講師:湊里香さん、佐藤育子さん)

神奈川県立横浜瀬谷高校と共生社会プロジェクトをおこなっています。

1月22日(月)は、神奈川県聴覚障害者福祉センターの湊里香さんと佐藤育子さんにゲスト講師として来ていただきました。神奈川県聴覚障害者福祉センターは、以前、Ana Letterでも取材させていただいています(取材記事:コラボから生まれる新しい取組み「聞こえない」で終わらないコミュニケーションを)。

これまでの授業の様子:11/271/15

横浜瀬谷高校とのコラボレーション

横浜瀬谷高校の2年生は「総合的な探究の時間」のなかで16プロジェクトに分かれ、探究学習を進めています。共生社会プロジェクトには14名の生徒が参加し、多くの人が暮らしやすい地域を目指して、共生社会について学んでいます。

障がいのアナは、そのプロジェクトの一部をお手伝いしています。生徒たちに新しい気づきと考える力を養ってもらえるよう、楽しい授業をつくっていきたいと考えています

授業の内容

今回は、神奈川県聴覚障害者福祉センターの湊里香さんと佐藤育子さんにゲスト講師をお願いしました。湊さんは聴覚障がいがあり、生まれたときから耳が聞こえません。

授業の内容は、【ミニ講演】、【一緒に会話】、【振り返り・質問タイム】です。

ミニ講演

おふたりの自己紹介に始まり、難聴体験、ろう体験、暮らしのなかのエピソードなどを紹介してもらいました。体験と通して、「聞こえづらい」「聞こえない」、それぞれ異なる困難さがあることを実感しました。

難聴体験は、アプリ「Hearloss」を用いて、実施。生徒たちには、聞き取れた内容をスマホに入力してもらいました。

プロジェクト担当の萩原拓己先生が話す内容を、難聴のような聞こえ方にすると「井村?志村?木村?」「いち?しち?」と、いくら頑張っても、聞き間違えが多くなりました

ろう体験は、口の形だけで何を話したのかを読み取ってもらいました。単語や短い文章でも、音がないと想像もつかないことを実感。

体験した生徒から「伝わらないことがもどかしい」という感想がありました。口の形とジェスチャーを合わせると、わかることが増えました。

音声認識ソフトも活用できますが、完璧ではありません。同音語の表記など、AIも苦手な領域はあります。

体験のあとは、難聴者、ろう者の体験談などを伺いました

聴覚に障がいがあると情報を同時に知ることができない場面も出てきます。同じ空間にいる仲間なのに、蚊帳の外にされる状況を想像してみましょう

伝え方の工夫はたくさんあります。「聴覚に障がいがあるから、仕方がない」は違うのではないかな、と感じることができました

一緒に会話

2つのグループに分かれて、湊さんと会話をしてもらいました。この時間は、手話通訳はありません。

「湊さんが転校生としてやってきたら」という設定で、それぞれのグループで、【横浜瀬谷高校のプロジェクト学習】【横浜瀬谷高校の1日の流れ】を話題に、会話をスタート。

こちらのグループは、【横浜瀬谷高校のプロジェクト学習】を紹介。伝えたい基本の情報をパソコンに打ち込んで会話が始まり、その後も筆談やパソコン入力で会話を進めていました。

手話が分からなくても、湊さんの手話を読み取って、会話を進める様子もありました。

こちらのグループは、【横浜瀬谷高校の1日の流れ】を紹介。筆談したメモとともに、1週間の時間割をスマホで見せていました。挨拶やイラストも添えてある筆談メモは、そこに笑顔が見えるようでした。

筆談しているときも、お互いの表情や身振り手振りの表現など、筆談以外のコミュニケーションが多いことにも気づきました。

振り返り・質問タイム

生徒たちからの質問は「手話を習得するためにはどのくらいかかるのか」「湊さんは耳のどこの障がいなのか」「聞こえやすい音はあるのか」など、具体的な内容が多く、とても良い機会になりました。

授業の終わりには、スマホのアプリをつかって、チャイムが鳴っていることを文字にして、電光掲示板のように流してくれました。

感じたこと・気づいたこと

生徒たちは、このような気づきを感想として寄せてくれました。感想の一部を紹介します。

全く同じ言葉でイントネーションが違う言葉だと口の動きから読むことは難しいし、AIでも文字に起こすことが難しいということを知り、聴覚障がいのある人の凄さを知ることができました。

耳が不自由な人は普段周りの音がどのように聞こえるのか実際に体験してみて、その人にも周りの状況を伝えるにはどのように工夫すれば良いのか考えることができた。

湊さんとグループで交流してみて、耳が不自由な人とでもスマホを使ったり筆談をしたり少し工夫することで簡単に意思疎通できるとわかった。

名前の手話は漢字の形が由来になっているものや漢字が異なるものでも音が同じものなど、指文字よりも短く伝わるように工夫されていて興味深かった。

手話も言語であると言われたときはっとしました。字を丁寧に書くことは、相手に気持ちを伝える上で大切であると改めて感じました。

音が聞こえないのではなく、籠ったような音で認識ができなかったり、鼓膜の震えしか分からないというように今までの病気への認識が誤っていたことを知りました。

聴覚障がいのある方とのコミュニケーションは障がいのない人とのコミュニケーションより手間と時間がかかってしまうことが分かり、大変だと感じた。

普段の口頭でのコミュニケーションができないだけで、これほど苦労するのだと感じた。

難聴の聴覚障がい者はどのような聞こえ方をするのか聞いてみて、音がこもってしまうので、音が聞こえても何を喋っているのかわからないことがわかった。

同じ口の動きの言葉が多くて難しかった。

筆談だとどうしても時間がかかってしまうため、手話はあったほうがお互いに楽なのだと気がついた。

学べた。

今後に活かしていきたいこと

生徒たちは、このような想いを寄せてくれました。感想の一部を紹介します。

筆談やスマホなど文字に起こして会話することもできるが、凄く面倒だし、手話がわからないというもどかしさを感じたので、簡単な手話は覚えてみたいと思いました。

補聴器をつけている人や中途失聴者の人の中には言葉を発して会話できる人もいるけれど、補聴器をつけてもほとんど聞こえない重度難聴の人は、今回の学習のように筆談や手話が必要不可欠なものだと感じた。

湊さんのエピソードを聞いて、聴覚障がいを持つ人はパッと見では聴者の人と見た目が変わらないことで、理解されづらい場面も多くあると知ることができた。

周りに聴覚障がいの人がいて何か伝えたいとき、自分は普段から筆談できるものを持っていないからスマホのメモ機能などを使うと意思疎通ができると思った。

耳のマークを日常で見かけたら、手伝えることがあるか考えようと思います。

手話が分からない僕たちが聴覚障がいのある方と手っ取り早くコミュニケーションする方法が、伝えたい言葉を紙に書いたり、スマホのメモアプリ等で文字を打ったりすることだと学んだ。

これから先、聴覚障がい者とコミュニケーションをするときにはこの方法を使いたい。

より広く多くの人と意思疎通するためには、情報機器なども活用し、多様なコミュニケーションの仕方を模索していく必要があると思った。

聴覚障がい者にどのように伝えたいことを伝えるのかを臨機応変に工夫したことを、今後に活かしていきたい。

相手の目を見て話したり、表情で表すことを大事にしたいです。

音声入力のアプリを入れて、街中で話しかけられても、すぐに対応できるようにしたいと思った。

しっかり行動する。

授業にご協力いただきました、神奈川県聴覚障害者福祉センターの湊里香さん、佐藤育子さん、ありがとうございました!

次回(1月29日)は、自閉症の方と関わる授業です。

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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