インタビュー

キラキラ光る、笑顔が溢れるダンスチーム(SUNNYandAce代表 MOMOさん・ダンス担当 さをりさん)

SUNNYandAceは、藤沢市を中心に活動するスペシャルニーズのある子ども達が集うダンスチームです。月に一度、スタジオを借りてダンスの先生からレッスンを受けています。

子ども達だけではなく、保護者も一緒に踊るなど、とっても賑やかで楽しい時間。レッスン中はスタジオ内が笑い声で溢れます。チームができた経緯や大切にしていることを、代表のMOMOさんとダンス担当のさをりさんに伺いました

スペシャルニーズのある子ども達のダンスチームを作ろうと思ったきっかけは、何だったのでしょうか?

MOMOさん
MOMOさん

きっかけは、障がいのあるなしに関係なく、『みんなで楽しく過ごそう』というイベントを開催している団体に出会い、楽しそうにみんなが踊っている姿を見て「私もやりたい」と思ったことでした

普段、放課後等デイサービスで働いてるのですが、そこにダンスをしたい子がいたのです。保護者の方から「ダンスをさせてあげたいけど、うちの子、なかなかダンス教室に受け入れてもらえないんです」と教えてもらいました。

そうやって『障がいがある』ということだけで、お断りされちゃうケースが多くあるのだと知り、「ないのなら、私が障がいがあっても通えるダンスチームを作ろう!」と決心しました

MOMOさん自身がダンスを始めたきっかけは?

MOMOさん
MOMOさん

実は…私、踊れないのです。今は練習して少しできるようになったのですが、もともとダンス音痴で、手と足を同時に動かすのも難しいと思ってしまうくらいでした。なので、ダンスの先生に依頼して一緒に活動しています。

さをりさんはSUNNYandAceを立ち上げてから、3人目の先生です。Instagramを通じて知り合い、依頼させてもらいました!

さをりさん
さをりさん

そうなのです。私は、スペシャルニーズのある子ども達との付き合いはもう10年ほどになります。Instagramでスペシャルニーズの子ども達の情報を発信しているアカウントを見ている中で、SUNNYandAceを知りました。フォローして、ストーリーズにいいねしていたら、MOMOちゃんがダイレクトメッセージをくれて。

やりとりしている中で「ダンスっていいですよね」という話になり、「私もダンスやっていました」と伝えたら、「先生になってほしいです!」と言われました。すごい!最近の若い子はこうやってアプローチしてくるのだって思いました(笑)年齢がひと回り違うので、びっくりして。

まずは1回お話しましょうと、直接会いました。その時に、MOMOちゃんの熱量がすごく伝わって、私もMOMOちゃんの夢を叶えてあげたいなと思ったのです。そのような経緯で、今年の1月からずっとダンスを担当しています。

Instagramがふたりをつないでくれたのですね!子ども達はどうやって集まったのでしょうか?

MOMOさん
MOMOさん

ダンスチームは3年ほど前からずっとやりたいと思っていました。

そこで、まず、障がいのある子ども達のお母さんたちとつながりを持たなくてはいけないと思い、Instagramのアカウントを作り、「私はこういうダンスチームを作りたい、参加してくれませんか?」とずっと発信してたのです。今の子ども達は、その中で集まったメンバーです。

さをりさん
さをりさん

MOMOちゃんの行動力は素晴らしいと思っています。普通、逆だと思っていて、「チームをつくって、そこに人が集まる」ということが多いです。

でも、MOMOちゃんは先にビジョンや想いを伝えて、その想いに賛同するダンスメンバーを集めていったのです

MOMOさん
MOMOさん

最初から一人二人参加したいという子がいたのですが、その人数だとチームとしては少ないし、一人の子がお休みをすると、レッスンに来れる子が一人になってしまう。そうすると、子ども達も保護者も緊張するだろうし…と考えました。

なので、そこでは始めず、もう少し人数が集まるまで待ちました。スタジオも、ダンススタジオを借りるのか、もうちょっと安い場所を借りるのかなど、試行錯誤して今の形になったのです。

ダンスを習うことのメリットはありますか?

MOMOさん
MOMOさん

身体の発達の面で、ダンスはとても大事だと思っています。ダンスがきっかけで、ジャンプしたり、歩くことだったり、もっと運動面が活発になればいいなと思っています。

最初はジャンプができないメンバーもいましたが、ダンスを始めて、まず階段が降りれるようになり、その後、ジャンプもできるようになったのです。保護者の方も、SUNNYandAceのおかげでできるようになるスピードが早まったのだと思うと言ってくださって。

少しずつの変化ですが、月に一度でもダンスを楽しみながら継続することは大事だなと思っています。心の面も、前向きな気持ちになれたらいいなと思います。

活動する上で工夫していることや、大切にしていることはありますか?

MOMOさん
MOMOさん

レッスンと聞くと、ちょっと堅苦しかったり、ちゃんと曲の振り付けを覚えて舞台に上がらなくてはいけないというイメージがあったりすると思います。でも、音楽を楽しんでもらうことを一番大切にしたいと考えています

その曲に合わせて踊れていたら100点満点だし、踊れなかった子も、さをりさんの動きを見て、ちょっとでも振り付けができたらそれも100点、音楽を聴きながら身体を少し揺らしたり、ただその空間を楽しむのも100点。「音楽を自由に楽しむ」なら、どんな障がいの子でも、みんなが参加できると思っています

今はいないのですが、たとえば車いすの子が来ても、上半身だけで踊るなど、それを楽しめるならすごくいいよねと、活動し始めたときから考えていました。

さをりさん
さをりさん

私は以前、特別支援学級の教員として働いていました。ほかにも、児童発達支援などの療育に関わっていた経験もあるのですが、そういう立場だと「こうしなきゃ駄目、ああしなきゃ駄目」となってしまう部分もありました。もちろん『教える場』が学校や療育だと思うので間違えではないのですが、そうではない場所も大切です。

学校でも療育でもなく、ここでは「のんびり自分らしくいていいよ」と思っています。踊りたくなかったら、休んでいてもいい。気持ちがあがらないのなら、踊らずここにいるだけでいいし、自分らしさを思いっきり出して過ごしてくれるだけで嬉しいです。そこは、MOMOちゃんと私は同じことを思っています。

ダンスを習い始めて、ご家族に変化はありましたか?

MOMOさん
MOMOさん

徐々に保護者同士の交流が増えてきていると思います

以前、クリスマス会の際に保護者同士がお話できる場を設けると、「うちの子のこういうところを悩んでるんだ」「放課後等デイサービスに通わせたいんだけど、どんな所が良いんだろう」など、良い情報交換の時間になっていました。

「ちょっと話しに行きたいんだよね」とか「普段は難しいけど、外出したいんだよね」という気持ちで、ダンスチームに来ていただいて大丈夫です。それも、私にとっては嬉しいことです。ダンス後の30分は、お菓子を食べながら、子ども達も自由に遊んでもらいながら、お話していただければと思っています。

印象的なエピソードはありますか?

さをりさん
さをりさん

以前、1歳の子が来てくれた時に、みんなでダンスしている中で、その1歳の子をメンバーがまるで自分の弟のようにかわいがる場面がありました。

あとはメンバーのお姉ちゃんが来てくれたこともあったのですが、その子が「また来たい!」と思ってくれているようで、それもすごく嬉しいなと思っています。人が集まれば関わりが生まれるのだなということを実感しています

MOMOさん
MOMOさん

実は、今まではダンス以外でメンバー同士で一緒に遊んだりすることはあまりなかったのです。

でも、今日のレッスンではフリーダンスの時間にトンネルくぐりをしたのが良かったのか、その後メンバーだけでコミュニケーションをとるようになっていました。まさに「関わりが生まれる」、嬉しい瞬間でした。

さをりさん
さをりさん

今日のフリーダンスは私も発見がありました。最初、私はメンバーと手をつないで踊っているだけだったのですが、つないだ手の下をMOMOちゃんがくぐってくれて、その後、メンバーも続いていき、「こうやってダンスの幅を広げていくのもいいな!」と感じました

地域で発表する機会などはあるのでしょうか?

MOMOさん
MOMOさん

月に一度しか活動がないので、舞台に出るためのダンスはなかなか難しく、今のところ発表の予定はありません

でも、今後は障がいのある子でもこんなにたくさん踊って、元気に活動できるのだとみんなに発信していきたいので、老人ホームで発表したり、地域の小さなお祭りに参加したりしたいです。

最後に、今後の目標を聞かせてください!

MOMOさん
MOMOさん

今は障がいのある子しか集めてないのですが、ゆくゆくは障がいのない子も一緒にダンスができる空間を作りたいなと考えています。小さい時から障がいがある子と自然と関われる場所があると良いのかなと感じています。

障がいのあるなしに関係なく、みんなでダンスできるのが理想です。障がいのない子が少し我慢をして参加するのではなく、その子も全力で楽しくて、もちろん、障がいがある子も全力で楽しめるチームを目指したいです。どの子が障がいがなくて、どの子が障がいがあって…など、そういったことが分からないくらいみんなで楽しくダンスできたらと思っています

メンバーと保護者の方にもお話を聞いてみました!

メンバー

ダンスはすき!たのしい!

ここにくるのが、たのしみ!

保護者の皆さん

寝っ転がっていたりする時もあるけど、自由に過ごさせてもらえることがありがたいです。

自分が好きな曲でダンスをさせてもらえるのが嬉しいみたいです。

言葉で自分の想いを表現できない分、身体を使って表現できるダンスが楽しいようです。

ポーテージプログラム(発達訓練などをする場)の先生に紹介してもらい、通うようになりました。ダンスは良い運動になっています。

通えそうなダンススクールがなかったのでありがたいです。いつの間にか踊れるようになっていました!

インタビューを終えて

MOMOさんが地道にメンバーを集め、さをりさんと出会い、月日を経て子ども達の笑顔につながったことを思うと、胸がキュンとなります

「やらなきゃ」より「やりたい」にフォーカスすると、心はなんて満ち足りるのでしょう。「やりたい」という情熱は他の誰かの心を動かし、出会いにより大きなパワーになることがあります。お二人の柔らかな情熱は、活動を通じて多くの人に届くような気がしています。

自分の気持ちを素直に表現するというのも、難しいものです。でもSUNNYandAceは、踊ったりお話ししたりして、自分を安心して解放できる場所。踊るという人間の根源的な表現には、気持ちを解放する効果があるのかもしれません

この記事はNEWライターはしもとあきこさんが書いた記事です。Ana Letterでは一緒に記事を書いてくれるライターを養成しています。

WRITER

はしもとあきこ

東京工芸大学デザイン学科卒。 (社福)東京コロニーで障がい者アーティストのエージェント職を経て、2021年より「せかふれアート」を主宰。湘南エリアを中心に、子どもアート教室の開催と、福祉施設でのアートプログラムの企画を行う。

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