インタビュー

地域連携、それは家族のような距離(おひさま薬局 富山穣さん)

「機械的にやることがケアではなくて、その人の人生と向き合い、関わらないことには始まらない」そう話してくれたのは、藤沢市羽鳥にある「おひさま薬局」の開設者である富山穣さんでした。何でも気さくに話してくださり、専門性を活かすとは何なのか、活かさないケアはあっていいのかと、プロフェッショナルの存在意義を語ってくれました。薬剤師である富山さんが語る「プロの仕事」は、職種を超え、医療の領域に限らず、私たちがどう連携をとっていくべきかということを教えてくれるものでした。

富山さんの考える「地域での連携」とは?

人生を楽しめる輪のことではないかと思います。ひとそれぞれ生活スタイルは違いますが、個人を尊重し、「興味がある」「知りたい」「手を借りたい」…といった気持ちから、人はつながりを持っていくように思っています。特に医療の中では、知識のある人が分からない人へアドバイスをする、必要としていることをよく聞き、理解して、同じ意識を持つことが連携かと考えます。

医療の現場では特に「地域連携」という言葉をよく耳にしますよね。ただ、何か変化があったときに「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」をしていれば連携がとれている、という感覚になってしまっているだけで、本来の連携が取れている、というのは違うのではないかと考えています。普段から常にやっておくことであって、それができていないとちゃんとしたケアはできないし、できていないのではないかなと。その連携は、たとえば、医師・看護師・薬剤師などの専門職でとるものではなくて、ご本人やご家族も、その連携の輪の中にいないと、充実したケアって考えていけないと思うんです。

富山さん
富山さん

充実したケア?

いわゆる質の高いケア、本来あるべきケア…って感じですね。言葉でいうと簡単なんですけどね。実際できているのか?考え直さないといけないのではないかとよく思います。ご本人やご家族の実態と向き合わず、「この病気だからこの薬、ちゃんと飲めているからOK」とそんな誰にでもできそうな確認をするだけのケアって専門職としてどうなのかなって。

語るだけでは意味がないので、現実のものにしていこう、見せていこうと思っています。本当の意味での充実したケアを実現するためには、まず対象地域が狭くても、というより狭くなってしまうのですが、今までおひさま薬局をご利用いただいている方に対してやってきたように、家族的な関わりを大切にしていきたいと考えています

富山さん
富山さん

それが、訪問看護ステーションを立ち上げられたきっかけに?

そうですね。もともと、おひさま薬局でも薬剤師による訪問をやっているんです。患者さんの家を訪問して、よく話を聞くと、自分の病気のことや今後のこと、ご本人の思う大きな問題や困っていることに対して、知らないまま日々を過ごしていることが多いんですよね。聞けなかったり、教えてもらえなかったり…そこで、外科的な治療ではなくソフトな治療、寄り添いが必要なのだと感じ、それをやるためには、薬剤師だけはなかなか難しいと考えるようになりました。

それこそ「地域連携」で、専門職同士が連携を取れればいいんでしょうけど、いろいろな壁が出てくるのも実際なんです。だったら、自分たちで仲間を増やして取り組んだほうがいいのではないかと、それが今回の立ち上げのきっかけになりました。

なので、ゆいまーる訪問看護ステーションでは、より身近な生活の中で、薬と看護のつながりを強くし、治療だけでなく、不安な気持ちや生活の中で起きている様々な部分に対するケアもしていけるような場所にしたいと思っています。

富山さん
富山さん

人としての関わりを大切にするということだと思うのですが、富山さんは、人との関わりをどのように考えていますか?

家族って言葉が近いと思います。よく「アットホームな職場」って聞くけど、それはどのようなものか?と疑問に思っていました。アットホームという、わかりにくい雰囲気をつくるのではなく、私は職場のスタッフは家族だと思って接しているつもりです。

また、お客さんというべきなのか、私と話したいと相談に来てくれる方は、身内のような、親友のような感覚でいます。大切な相手であれば、私の知っていることを伝えるだけでなく、当然、相手が求めているものを一緒に考えていくことになるんですよね。これは相談に来る方の気持ちも大切で、親友と思い合わないといけないんですよね。親友というのは、双方に理解し、頼れる言動が伴うものだと思っています。

富山さん
富山さん

障がいとは?

障がい・・・誰もが「障がい」は持っているものです。外から見えるものが違うだけだと思っています。

それに、見えているものだけが障がいではないのでは・・・と。たとえば、視覚障がいの方は常に目が見えないことで困っているわけではなく、日々いろいろなことがある中で、他のことに悩み、眠れない夜を過ごすこともあるでしょうし。いわゆる病気としての「障がい」がなくても、生きる上での「障がい」という壁はみんな持ってますよね。私もそうです。

富山さん
富山さん

みんなで同じ地域の中で、楽に暮らすためには?

干渉し合わないってことかな。普通に暮らせばいいのにって思っています。街の中で、車椅子の方がいても、ギャーと大きな声を出している方がいても、その人にとっては「ふつう」のことなのだから、危害を加えられるわけでもないなら、あえて距離を近づける必要も、あえて嫌う必要もないでしょって思うんです。

「ふつう」というのは難しいことです。でも、私の中では、「ともに生きる距離」って「家族の距離」なのかなと思っていて。「今日どこに行ったの?」とは聞くけど、こと細かく聞かれたり、干渉されたりっていうのは違うし、それをやってしまうと家庭内のバランスが崩れてしまう…なので、地域においても、人それぞれ違うのは普通のことなのだから、干渉せず、何とも思わずに生活できる状態がバランスがいいのではないかなと思っています。

富山さん
富山さん

富山さんは、これからの薬剤師人生でどんなことをやっていきたいでしょうか?

薬剤師になって二十数年・・・まだわからないです。これからも必要と思うことを勉強しながら、やっていくしかないのではないかと思います。具体的な計画は、時代の流れ、環境で変わるものです。助けてあげたい、助けてほしい、このような状況は、みんな同じです。

機械的に仕事をするような、お金を入れればジュースが出てくる「自販機」のような薬剤師には絶対にならないって思っていますね。薬剤師は薬の専門家であり、チーム医療のひとつのパーツです。とことん、患者さんと向き合えるかというのは個人によるところが大きいので、常にプロフェッショナルは何のためにいるのかを考えていきたいし、患者さんのバックグラウンドや気持ち、こころを大切にしていきたいと思っています。家族であり、親友である相手が困っている、では私の専門性をつかって何ができるだろう、その繰り返しだと思っています。

富山さん
富山さん

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■営業時間
月曜・火曜・木曜・金曜 9:00~18:00
土曜 9:00~13:00
お昼など、個別の相談、在宅医療等でいないこともありますが、相談などご連絡いただければ、時間を設けております♬
■内容
保険調剤、介護相談、在宅医療、またそれらに関わることの相談、ケア
■かかりつけ薬局をもつ良さは?
薬の飲み合わせなど見てもらえるということをよく言われますが、飲み合わせは当然であり、大事なのはその方の生活スタイル、好き嫌い、考え方などを知ったうえで、何か提案・相談できることがあるんだということを知ってもらうことが「かかりつけ」を持つということではないでしょうか。みなさんも行きつけの小料理屋さんがあると何か感じることはありませんか?
■地域の薬局だからこそできることって?
ホームドクターという概念がだんだん減っていると思います。そのような中で、2世代、3世代と関わりを持つことで分かること、お話しできることは多いと感じています。大きく、広くではなく、一つずつ地域でもやることはあります。夫婦喧嘩、仕事先の悩み、学校での悩みなども当薬局には相談にいらっしゃいます。それができることなのではないかと考えています。
■おひさま薬局
住所:神奈川県藤沢市羽鳥1-6-18
電話:0466-31-0955

インタビューを終えて

相手をどう思うかという心の持ち方で、その先の関わりや自分の仕事というものが変わってくること…これは医療の世界だけの話ではありませんね。

人を知る、人を関わる

私の中では、そこに心からのリスペクトがあるかどうかでも変わってくるのかなと思っています。

私の原動力は、白浜養護学校時代に出会ってきた子たちへの心からの尊敬であり、今、やっているすべての仕事も、「本当に、皆さん素敵ですね」という心からの尊敬が「伝えたい」という原動力になっているのだと気づくことができました。

人を向き合う上で、目から入ってくる情報が邪魔をすることもあります。富山さんが言っていた「見えているものだけが障がいではない…」という言葉も、まさに。

目から入るものは印象的で分かりやすいので、私たちは勝手にストーリーをつくってしまうことがあるのだと思っています。

インタビューを通して、向き合うって何だろう? わたし、何がしたいんだろう?、そう振り返るだけでも、明日の関わりが変わってくるように思いました。

おひさま薬局

住所:〒251-0056 藤沢市羽鳥1-6-18

電話:0466-31-0955 定休日:水・日・祝

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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