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想いを叶えるオーダーメイド(Mトワル 宮澤久美さん)[No.013]

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車椅子ドレスをデザインする、逗子在住の宮澤久美さん。12月におこなわれたエシカルファッションショーでも、宮澤さんの手掛けたドレスをまとい、多くのモデルさんが車椅子でランウェイしました。

想いを叶えるオーダーメイド、宮澤さんの手掛けるものはドレスだけではありません。オーダーメイドが叶えるのは「その方の人生、その方のすべて」だと教えてくれました。

障がいのある方や病気の方の想いを叶える洋服を仕立てている、Mトワルの宮澤久美さんにお話を伺いました

 

 

宮澤さんはどんなお仕事されているのか、教えてください

もともとは、アパレル企業で企画デザインをしていました。その後、デザイナー、パタンナーとして独立しました。ネット販売が広がってきた時代だったので、デザイナーをネットで募集しているということもあったので、イオンとの業務提携やECサイトオリジナルの婦人服デザインの業務を請け負ったりしていました。

仕事内容としては、オーダーメイドの服を作ったり、今ある服をもとに袖を短くするなどリメイク服を作ったりしています。まずはデザイン、そこからパターン…いわゆる型紙を作り、縫製するという仕事をしています。アパレル業界では、デザイン・パターン作り・縫製…と、仕事が細分化されているのですが、それを最初から最後まで、全部ひとりでやるのというスタイルでオーダーメイドの服を作っています。とくに、オーバーサイズの洋服や、障害のある方や高齢者など既製服が合いにくい方への洋服をお作りしています

 

既製の服が合わない方々へのオーダーメイドってやはり大切ですか?

「着る」という動作が、運動のようになっている方々が多いなというのが印象でした。身体って重いんですよね。腕は重さでいうと片手4kg程度、足なら8kgから10kg近く…それが、麻痺などの感覚で動かせないと、自分で持ち上げて袖を通していかないといけない…そうすると、汗をかきながら、ハーハー言ってしまう人もいるくらい、着替えるということが大変なことなんですよね。

若いときはまだいいのですが、年をとっていくと…さらに動作が大変になります。「着る」ということを、楽しく、なるべく簡単に、と思いますね。オーダーメイドの必要性ってそこにあると思うんです。

 

障がいのある方など、既製服が合いにくい方への洋服は、最初、どんなものを作ってきたのですか?

2016年くらいにインターネットを介して、80cmを満たないような低身長のお子さんから依頼を受けたのが最初でした。身長が低いと洋服も限られてしまって、乳幼児用の服になってしまうんですよね。小学校に入学するのでブレザージャケットとワンピースが欲しいと言われたんです。難しさとしては、側わん症もあったので、背骨が変形していて、どうやったら綺麗に着られるかなとチャレンジした感じでした。完成するとすごく喜んでくださって、こういった想いや状況のご家庭もあるのだなと知った感じでした

「インターネットを通して」というのが、私のスタイルにもなっていて。採寸もできずにどうやるんだ?って思うかも知れませんが、普段着ているものを送ってもらったり、前後左右、上から…いろいろな角度の写真を送ってもらうなどしていました。会わずとも…会っているようにサイズも合わせられるし、会っているように心がつながって関わることができるんですよね

 

そのあとも、そういったオーダーメイドの依頼があったのですか?

他には、乳がんの術後の方のキャミソールのオーダーでは、気持ちが落ち込んでいる時期だったので「フリルがたくさん付いていて、つけるだけで楽しくなるもの」と頼んでもらいました。それから、ウエストが130cmくらいある高校生の男の子の介護パンツの依頼があったり、医療職の方々と一緒に、認知症患者のための介護用のつなぎ服の研究したり、片麻痺のリハビリ服などを作ったりもしましたね。

継続的に作っているものとしては、パニック障がい、知的障がいのあるお子さんのオールインワンです。オールインワンということで、洋服の上下がつながっていて、後ろがファスナーで着られるようになっている、いわゆる「つなぎ」です。思春期を迎えると、二次性徴を迎え、男の子も女の子も、自分の身体のいろいろな部位を触ってしまうことがあるんです。そうすると、日常的にも外で触らないようにするのが大変だったり、ショートステイなど一人で施設に泊まるときには、制限ができてしまうこともあったり。本人もつらいですし、施設の方々も大変だし、少しでも楽になってもらいたい…と、そこにお母さんの想いがあったんです。そこに感動しましたね。

 

私も特別支援学校に勤めているときに、やはりオールインワンが必要な生徒さんがいました。ご家族で工夫されて、ミシンを使ってつくっていたと思うのですが…宮澤さんが作っていたのはどのようなものですか?

いろいろと工夫していますね、オールインワンも洋服なので。Tシャツとジーパンとか、その子らしいデザインにしました。素材でいうと、着たまま眠れるようなスウェット地のもの、Tシャツ素材とか、ストレッチ素材のデニム、いろいろなセットアップのオールインワンを作りました。

基本的に普段着ですから、値段が高くなると作れなくなってしまうので…生地探しからコストを抑えられるように。ただ、よく洗濯するものなので、ほつれちゃうんですよね。作るたびに、改良を重ねつつ…やっていますね。細かい点でいうと、身長が高いと、生地の重さが全部肩に乗ってしまうんですよね。それが破れにつながってしまったり…いろいろと技術的な工夫もしています。あとは、今の若い子の流行を取り入れて、ただのパジャマのようになってしまわないようにしますね

これがオールインワンの写真です。このデザインが好きとか嫌いとか、好みってご本人の中にあると思うので、そこも汲み取っていきたいなと思いますね。

< 開発者 猿田のりこ さん >

 

これ、オールインワン、なんですか?想像よりもオシャレでビックリしました。これがプロの技ってことですね

すべてのオーダーメイドにいえるのですが、大事なことは、工夫と研究と…使う状況に合わせて「カラフルにしようかな」など、色と楽しみが加えられるので、こちらも楽しいです。

この方の洋服に対する想いもありますけど、その周りにいる方…たとえば、支援してくれる人への想いっていうのがありますからね。すごいなと思います、ヘルパーさんへの想いで洋服をこうしたい…とか。服って幅広いというか、奥深いというか、いろいろな想いが乗せられるんですよね。

「着る」という作業は、1日の中でとても多いんです。さっきも「運動」のようだと伝えましたが、年齢や障がいによっては、1日の1/3くらいの時間を費やしているのではと感じることもあります。なので、ないがしろにはできないですし、大事にしていかないといけないなと思っています。

 

ファッションショーもありましたが、車椅子ユーザーのためのドレスを手掛けるようになったのは、いつからなのですか?

2017年1月くらいに、カマコンというビジネスプレゼンテーションの集まりがあり、ユニバーサルウェディングを提案していた鎌倉武士の高野さんから、車椅子のウェディングドレスを作らないかと声を掛けていただきました。古いドレスをもらい、これで何かできないか…というアップサイクルですね。これは、私にとって本当にいい機会になりました。もともとあったものを、アップサイクルしていくっていう発想も良いですし、実際にウェディングドレスも可愛く作れたので楽しかったですね

椅子に座るとなると、どこを可愛くできたらいいかなと工夫し、膝の上をふわっとさせたり、身長も必然的に高さが出ないので、シュッとしているドレスより、ふわっと華やかにしたり…創作としての楽しさもありますね。そのとき、モデルとして着てくれた車椅子ユーザーの女の子の喜んではしゃいだ顔が忘れられないですね

車椅子であっても誰であっても、好きなデザインの好きなドレスを選ぶという当たり前があっていいはず…そんな思いが次第に強くなり、もっと社会に伝えたいと考え、車椅子ドレスの制作に取り組むようになりました

また翌年には、逗子アートフェスティバルで、福祉×アートの『みんなでアート』というイベントがあり、そちらでも車椅子ドレスを出品しました。昨年も同フェスティバルで車椅子ファッションショーを開催しています。ファッションショーはいいですよ。「わ~!これ着るの~!?」とテンションが上がっていくモデルさんたちを見るのが幸せですね。車椅子の方に限ったことではなく、年代問わず、女性としての喜びなんでしょうね…まぁ、性別も問わないとも思いますが。おしゃれってすごく重要だなと思います

 

車椅子用のドレスを作っていて、気づいたことや学んだことはありますか?

車椅子のドレスを作るときに注意点は「上からの視線」です。常に、自分より上に人の目があるため、大きく胸元が開いたドレスなどを仕立てるときには、浮いて覗かれりしないように気をつけなければなりません。それを避けるために、別のデザインを提案したことがあります

すると彼女が一言「…でも…このデザインが好きなんです…」と。 ハッとしました。車椅子ならこれがよいと、私が思い込んでいるデザインを押しつけてはいけない。選ぶのは、彼女だったのです。結果的に本当によく似合う今までに作ったことのない素敵なドレスに仕上がりました。

今では、胸元が開いているなら、フリルを足したり、工夫をしますね。作ってみるたびに、彼女たちの想いに触れ、改良改良…と繰り返してきました。もう何着作ったでしょうか…だんだんとノウハウが溜まってきたのを感じます。

 

 

宮澤さんのドレスを見ていると、本当にすごく綺麗で、ドレスを作るとき、どんなことを大切にされていますか?

シルエットと色ですね 座った状態で可愛らしく美しいシルエット、車椅子の分量感でバランスの取れたカラーリング

車椅子身長だと通常より低くなるので、その高さからのスカートのバランスや幅の広さなど…綺麗に見えるように考えています。いろいろなドレスで、いろいろなシルエットが出せたら面白いなと思っています。色もそうで、素材感も大事だけど、パッと見たときの印象は、色からくるものが大きいです色の重なりや濃淡…バランスのいいものを作っていきたいなと思っています。

同時に、長時間着ていても、疲れることがなく、移動が楽、着ることに時間のかからない機能性も、大変重視しています

ウェディングドレスというと、後ろで紐で結ぶタイプのものが多いのですが、車椅子ドレスでは、そこはすべて外してしまって、シャーリングのニット生地や、コットンやスムースなど柔らかい素材に作りなおします。ファスナーは脇につけるようにして…着るのに1度ベッドの上で横にならなくてはいけないというような構造だと、本人も大変ですしね。

 

その人に合うものって、いろいろな側面があるものなんですね。宮澤さんが「その人に合う洋服をつくる」という想いになったきっかけは、いつ頃だったんですか?

初めて「その人に似合う服」を作ったのは、中学2年生の時でした。当時、私が何かを作って学校に持っていたんでしょうね…思い出せないのですが(笑)

その中で、養護施設から中学へ通っていた女の子に 「私にも作って」と言われ、その子に洋服を作ったんです。当時、流行っていた、ジュニア向けの服飾雑誌「ジュニアスタイル」の型紙や作り方を見よう見まねで作りました。グレーの生地に、襟に白いラインの入った深いセーラーカラーのワンピースで、日焼けしていた彼女によく似合っていました。白い帽子とコーディネートして着てくれて、本当に良く似合っていたし、すごく喜んでくれて…今でもよく覚えています

それが「人のために服を作る」ということに、私がのめりこんでいく…大きなきっかけだったと思います。

「人のために作ってあげたい」「喜ばれるって嬉しい」そう思ったあの気持ちは、今も変わっていないなと気づきます。昔、アパレルで働いていた時は、着る人の顔が見えなくて、売れたか売れてないか、そのフィードバックを聞くだけだったので、「その人が喜ぶものを作る」という根本を自然と忘れてしまっていたのかなと思います。

なので、今の仕事は本当に幸せですね。ネットを介しても、性格も見えてくるし、気持ちも見えてくるし…たとえ、会えていなくても、その人がつながるんですよね。一対一のやりとりを大切にできることも楽しいですし、場所を問わず、心がつながるオーダーメイドができるのもいいです

 

似合う服、喜ぶ姿…車椅子ドレスもそうですが、自分の好きなものを選択できるって重要ですね。人にとって「選択をする」とは、何だと思いますか?

生きることそのものですね。 常に私たちは、考えて決めて行動してますよね。自分で選んで決めていくということ自体が、生きることだと思います。もちろん、環境や経験などの影響も受けていますが、それでも「自分で選択した」と思えることで、自尊心やプライドが確立できるかなと思っています。

認められたってことなんですよね、選択ができるというのは。どんな状況であっても、その人の人生を認めた、認められた、ということなのかなとそれを可能にしているのがオーダーメイドだと思います。洋服だけでなく、今日何を食べるか、どこへ行くか、何を楽しんで、何をしないか…一つ一つ 自分で決められることに尊厳があるように思うのです

車椅子ドレスでいえば、社会の中にドレスが溢れていても、車椅子用のドレスは少ないです。そうすると、考える選択肢がないんですよね。もしくは、「ドレスを着る」「ドレスを選ぶ」という発想自体がない方も多いと思います。普通の女の子たち選んでるように、あなたたちも選んでいいのよと伝えたいんです。選択することが当たり前ではないという今の環境は「あなたのような人は数が少ないからこれでいいでしょ」と言っているのと同じですよね。それってどうなのかなって思うんです。だから、そこを増やすことができたら、それを当たり前にしていけたらと思っています

 

大切なことですね。宮澤さんは今後、どのようなことをやっていきたいですか?

コロナ禍で、楽しい時間、幸せを感じる時間がどんどん減らされている気がします。 私にできることは何だろうと考えると、少しでも家族とおしゃれに楽しめる時間が持てたらなと思いました。なので、『おうちで車椅子ドレスフォト』ネットサービスを始めたいと思っています。これは、選べる車椅子ドレスとおうちで撮影できるスタンドや背景などをセットして、ご自宅に配送するサービスです。もちろんパーティーや結婚式で使うこともできますし、成人式などができなかった地域も多いと思うので、車椅子ドレスに特化してしまうのですが、使ってもらえたらなと思います。

あとは、今年も逗子アートフェスティバルでファッションショーを行いたいです『みんなでアート』は車椅子だけでなく、知的障がいやダウン症の方たちとおこなうアートワークから服を創造したり、古着や古着物を使ったエシカルな服があったりと、みんなが参加できています。また、当事者たちがモデルになれるファッションショーや障がいの方の落語、マジック、ピアノなどのパフォーマンスもあり、共生社会を体現できるようなイベントです。コロナで心配なことが多いですが、工夫やアイディア、みんなで楽しむ気持ちを大切にして乗り越えていけたらと思っています。

■ Mトワル ■

車椅子ドレス工房W2-Dress

『おうちで車椅子ドレスフォト』始めました!

 

インタビューを終えて

ふと、自分のウェディングドレス選びを思い出すと、たくさんのドレスが部屋中に並び、選ぶことすら大変で何度休憩をしただろうと…環境の違いを実感します。

特別支援学校時代に出会った、オールインワンも、デザインやバリエーションという発想ではなく「ご家族、がんばって作ってくれてありがとう。ピンクで可愛い!大事に学校でも使います」と…「選択肢」という発想以前の『これがあって良かった』という感覚で、それ以上を考えたこともなかったなと気づきました

宮澤さんのデザインを知り、こんなオールインワンって作れるのね!と、ビックリでした。

知るというのは大きいことで、知ったことで「当たり前」にはもっとバリエーションがあることを発見します

その子を思い返すと、費用面もあるので、選ぶ選ばないは別ですが、ご家族に「こういうの作ってる人がいますよ」と伝えられれば、選択肢として広げることができたのだと思います。知らなければ、発想すら生まれない…とは本当だなと痛感しました。

宮澤さんの、その人の想いとともに洋服を仕立てるという、毎日のお仕事。プロフェッショナルだからこそ叶えられることもありますし、そこに「人を想う」という視点があると、さまざまな面で、細やかな優しさがオーダーメイドに加わっていくのだと感じました

好みは人それぞれですが、決められたものを選ぶのではなく、選ぼうと思えば、他も「選べる」というたり前を作っていきたいと思いました

 

宮澤久美さんの手掛けたドレスが出品されたエシカルファッションショー♬

わたしたちは車椅子でランウェイする(眠梨桜さん・有本奈緒美さん)

今週末となった12月13日(日)に、東京・目黒でファッションショーがおこなわれます。鎌倉出身で「W2-Dress」デザイナー宮澤久美さんが手掛けるドレスを、2人のモデルが車椅子でランウェイします。今年 ...

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M トワル

電話:050-3578-2929

Web:http://mt.cutewdress.com/

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Mトワル

神奈川県逗子市久木8-19-10
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http://mt.cutewdress.com/


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小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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