インタビュー コラム

わたしの旅を一緒に(車いすYouTuber・モデル 眠梨桜さん)

とても可愛らしく、そして謙虚に自分のことを話してくれる眠梨桜(ねむりさくら)さんチャンネル登録者数が4万人を超えるYoutuber「Youtuberやってるけど人見知りで、緊張強いなんです…」そう照れながらも、彼女は発信することを続けている―彼女の伝えたい想い、何のためにカメラを回すのか、私たちに彼女が見せてくれているものは何なのだろうか、23歳の誕生日を迎え、結婚1周年を迎え、進化し続ける眠梨桜さんをご紹介していきましょう。

障がいのこと載せますか?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

書いてください。私が伝えたいのは、障がいがあってもできることがたくさんあったり、楽しめることがたくさんあることなので…最初に触れてほしいです。

眠梨さんの身体や心の状態教えてください。

眠梨桜さん
眠梨桜さん

1歳の頃に脳脊髄炎という病気をきっかけに、四肢体幹機能障がい、学習障がいの中の算数障がいになりました。障がいを感じるのは主に足で、上半身は手先の細かい動作が難しいですね。一応、中途障がいではあるのですが、私としては1歳より前の記憶ってないので、生まれてからずっとこの身体って感じです。移動は基本的に車椅子です。短距離であれば杖を使ったり、家では壁をつたって歩行したりしています。

心の方はというと、13歳の頃になると、中学校でいじめにあい、精神障がいを患いました。最初はパニック障がいとか過換気障がい…いわゆる過呼吸です。この症状は今は落ち着いています。ただ、人付き合いって難しいなと思うことが多くて。就職した時には、職場でうまくいかなくて、うつ病にもなりました。これは波があって、たまにつらいなと感じる日がやってきます。

Youtuberとして活躍中です。どのような配信をおこなっていますか?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

今話したような私自身の障がいや、その障がいとの生活風景、旅先のバリアフリーなどを動画にしています。想いとしては、「障がい」を健常者の方々が身近に感じてもらえたらと発信しています。また、障がいのある方々が旅行やお出かけの際のバリアフリー状況などがわかるよう、発信しています。

コメントなども多いのでは?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

そうなんです!たくさんいただけて。たとえば、「自分も車椅子でなかなか旅行には行けないけど、まるで旅行に行った気分になりました」とか、すごく嬉しいなって思うんです。なので、私も旅行の動画を撮るときは、観てくれる方々と一緒に旅行してくるような気分で撮ってきています。

YouTubeでの配信を始めたきっかけは何でしょうか?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

配信をはじめたのは19歳の頃です。18歳のときに一度就職をし、人間関係に悩んでリタイアしたあと休養していたのですが、体調も整ってきたので、次のステップを考えた時に、よく見ていたYouTubeを私も発信する側としてやってみようと思ったのがきっかけです。

当時、障がい者水泳でパラリンピックを目指していましたが、それを引退しYouTubeに集中して活躍できるよう、環境を整えました。水泳は5歳から始めていて、小学5年生からは障がい者チームに入って、結構バリバリやっていたんです。

配信を始めた頃と今と…やっぱり違いますか?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

全然ちがいます~!カメラワークも違うし、声も小さいし(笑)

でも、それもいい思い出というか。Youtubeチャンネルには、初めての配信から全部残っているので、伝えたいことが残っていくことはいいなと思っています。

旅をする動画もたくさんあります。眠梨さんの伝えたいこと、教えてください。

眠梨桜さん
眠梨桜さん

障がいがあるからといって、自分の好きなこと、やりたいことを諦めなきゃいけないというのは違うのかなと思っています。

私は本当に旅が好きで、見たことない景色を見たり、食べたことのないものを食べるのも大好きです。

今はどうしても障がいへの理解が足りない、また偏見も多いです。なので、私が障がいがあっても、おしゃれをしたり、出かけたり、家事をしたりするんだよ、という発信をすることで、より多くの障がいのある方々が過ごしやすいように環境が整ったり、活動しやすい世の中に変わっていけばと思っています。

印象に残っている旅先、ありますか?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

そうですね、どこも思い出がたくさんあるんですけど…一番は、2019年11月に行ったタイですね。海外にずっと憧れていたからすごく嬉しくて。もともと、発展途上国などに興味があって、海外で仕事をしたいと思っていたんです。なので、タイが発展途上国と言っているわけではないのですが、とにかく現地を見て調査がしたかった…でも、実際に行ってみたら、タイのほうが進んでることがたくさんあって!

たとえば、日本だと車椅子で電車に乗るときって、渡るために板をかけてもらわないといけないんですけど、アレなくて乗れるんです。渡るための板を置いてもらわず、車椅子のままスムーズに乗れて、あーすごいなぁと思いました。本当は今年は12月にフィリピンに行く予定だったんですけど、コロナで断念しました。

藤沢など湘南エリアにも来ることはありますか?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

結構行きます!湘南エリアだと…葉山、鎌倉、江ノ島とかですね。去年は夏に友だちを行ったんですけど、江の島の人、みんな優しかったです!夏なので、日焼けをして…それに対して声をかけてくれたり。あと、食べ物も美味しかったです。とびっちょに行ったんですけど、しらすのかき揚げ丼!あれ、美味しかったです。つたいながら歩けるので、階段上って2階席で食べて…声をかけてくれたり、温かい人多いなぁって印象でしたね。

モデル活動についても教えてください。

眠梨桜さん
眠梨桜さん

モデル活動はYouTube始めたタイミングで始めました。重度障がいがあり、ブランドを立ち上げた天羽柚月さんの「Happy♡Link」というブランドの専属モデルをさせていただき、2018年から例年、5月頃開催されている吉祥寺コレクションというファッションショーに出演させていただいています。

またCoCo lifeというフリーペーパーにも載せていただいた経験や、今、私の乗っている車椅子はYAMAHAさんの車椅子なのですが、YAMAHAさんのホームページの特集にも載せて頂いた経験があります。今年はUnimodeさんとCo-wardrobeさんの特集にも載せていただきました。

眠梨さんにとって「おしゃれ」とは何でしょうか?

眠梨桜さん
眠梨桜さん

「おしゃれ」とは個性だと思います。まずおしゃれが好きであることが前提ですが、私が「おしゃれ」に目覚めたのは高校卒業の頃でした。それまで全く興味がありませんでした。また、おしゃれなんて私には…と弱気でいました。そんなときに、友達が髪を巻いてくれたり、洋服を選んでくれて

その服を着て一緒に買い物やディズニーに行き、「おしゃれって楽しい!」と思えたのがはじまりです。楽しみが増えた、趣味が広がったという感じですね。それに、「私でもおしゃれできるんだ」と自信につながりました

おしゃれをすることで新しい自分になれたり、いろんな自分を知ることができます。そうしていく中で、次第に自分という人間について自信がつき自分らしく生きようと思えるようになりました。

社会の皆さんに伝えたいことを教えてください。

眠梨桜さん
眠梨桜さん

『障がい=何もできない、家に引きこもっていなきゃいけない』という印象が多いと思いますが、それは違います。障がいがあっても、働いて、生計を立てて、生活をしていかなければなりません。そして、障がいがある方も趣味があり、やりたいことがあり、行きたいところもあります。叶えたい夢を持っている方もいます

障がいの有無、置かれてる環境はそれぞれ違いはありますが、それでも同じ人間です

障がいがあっても健常者の方々と同じように移動し、仕事をしたり、人と関わり、おしゃれをしたり、家族や友人と旅をしたり…そんなことが自然とできるような社会に、今後変わっていけるよう、私は活動していきたいと思います。

皆さんにお知らせ

1213()「目黒街角HeartArtクリスマス」エシカルファッションショーに出演します♬

インタビューを終えて

このインタビューは、ある1通のメールがサイトに届いたことから始まりました。

「藤沢ではないけれど、車椅子のモデルがランウェイする企画がある、想いがあり、発信していこうと前へ進む彼女たちにインタビューできないか?」そのご縁から、眠梨桜さんと出会うことができました。

眠梨さんはYouTubeの中で、多くの「自分」を見せてくれています。もちろん、障がいの有無に関わらず、明るく過ごせる日ばかりではないと思います。それでも、眠梨さんの姿や声、発する言葉にパワーをもらうのは、「伝えることで誰かを助けたい」というとても大きな思いがそこにあるのだと思います。

特に印象的だったのは、旅をするとき、YouTubeを観てくれている皆さんと旅行をしているようなんです、という言葉でした。

この綺麗な景色を一緒に観ましょうと、カメラを回す彼女は、果たして「障がい者=できないことが多い」という世界観の中にいるのでしょうか?

ありのままを知ること、ひとりひとり違いがあり、それでいて同じ人であるということ。眠梨桜さんが伝えてくれている日常が私たちに与えてくれるものは、とても大きく、その活動に心から感謝です。

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WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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