インタビュー

わたしにとって「働く」とは(藤沢病院リワークプログラムに通所する3名の声)

医療法人社団清心会 藤沢病院「リワーク」。復職支援プログラムを見学し、通所される3名の方からお話を伺う機会をいただきました。藤沢病院のリワークは、2013年5月に始まりました。ニーズに合わせ、体制を少しずつ変えながら、現在のプログラムに至っています。

休職中の方が、主に医師や会社のすすめで参加しているというリワーク。参加される皆さんにとって「働く」とは何であるのか、また、藤沢病院のリワークプログラムにどのような想いを抱いているのか、伺ってきました。貴重なお話をしてくださった3名の皆さん、また当日の活動に参加されていた皆さん、本当にありがとうございました。

藤沢病院のリワークプログラムとは

お話を伺ったのは

50代男性(通所3ヶ月 2020.9~)、20代後半男性(通所3ヶ月 2020.9~)、20代後半女性(通所4か月 2020.8~)の3名です。

リワークに参加しようと思ったきっかけは何ですか?

50代男性
50代男性

会社から出されている復職の条件として、リワークプログラムを1クール(3ヶ月)やってから、復職面談という流れなんです。

20代男性
20代男性

産業医と上司の指示で通うことになりました。

20代女性
20代女性

主治医に勧められてですね。「リワークに行って、自信を取り戻すのが、回復への一番の近道」とのことでした。

参加する前は緊張したり、不安に思うことはありましたか

50代男性
50代男性

特に…言われたことはやるほうなので

20代男性
20代男性

緊張はなかったです。不安としては、お金の不安が大きかったです。収入がなくなる、年金などは払わなくてはいけない、ここまで通うのにも交通費や診察代もかかるので。

20代女性
20代女性

もちろんありました。何をするところなのか、どんな人たちがいらっしゃるのか、通われている方が男性ばかりで大丈夫か、年齢層はどうなのか、仲間になれるのか、暗そうなイメージがある…など。見学をして少し解消されたものの、やはり当日までドキドキしていました

実際にリワークに参加してみていかがでしょうか?

50代男性
50代男性

こちらにきて勉強するようになって、モノの見方が大きく変わりました。もちろん「認知」をいう言葉は知っていましたが、認知というものは自分たちのフィルターを通してインプットされていることを初めて知りました。そして、その認知に基づいて感情が生まれてくるなど勉強できたことが、今後の生きていく上での重要なスキルになったなと思っています。

50歳代になっても、まだまだ人間の伸びしろを感じさせてもらいましたね、まだ成長できるんだなと。「まだまだ」と思えることはいいことだなと思いますね、成長できるということなので。

20代男性
20代男性

大学の頃、勉強していたので「メタ認知」という言葉は知っていたんですけど、「べき思考」「白黒思考」であったり、知らない内容を知る機会にもなっています。新しい発見もできているし、大学では学べなかったことを学んでいる感じですね。新入社員の頃から自己分析をしてきたんですけど、ここに来ることによって、もっと具体的に自己分析をできたのが良かったです。瞬間瞬間の場面を切り取って、どういった思考が隠れているのかというのを学べるのが嬉しいです。

自分の中ではスタッフの方に「軌道修正」をしていただいていると思っていて、周りの方に相談せずに無理をしてしまうタイプなので、無理をするとストレスに負荷がかかってしまうので、その負荷の方向性をかえる作業をしていますね。

20代女性
20代女性

毎日、新たな学びと発見があって面白いです。スタッフ、メンバーの皆さまもお優しく、安心して通えています。自分自身と向き合うプログラムばかりなので、ちょっと苦しくなってしまうこともありますが、自分のことをモニタリング、コントロールするためのよい機会だなと思っています。

体調のどん底を脱出した9月中旬ごろから前向きに取り組めるようになりました。メンバーの数人に「元気になったのが自分のことのように嬉しい」と言ってもらえて、とてもありがたかったです。皆さまに見守ってもらっています。メンバーの皆さまは、通所開始日もお仕事の内容も考え方などもバラバラですが、みんなで一緒に前を向こうとしているという感覚があります。同じような病気での悩み、苦しみを共有できてほっとする瞬間が何度もありました。そして…卓球の熱気がすごいんです!!

あなたにとって「働く」とは?

50代男性
50代男性

「働く」ことですか。本当は喜びを見出すこと…とか言えたらいいんでしょうけど、実際はお金のためであったり、家計の安定のためであったりですね。ここへ来て「働きがい」とか「生きがい」とか考える機会が増えました。…よく分からなくなりますね、今まで深く考えたこともなかったし、働くという意味を考えたこともなかったので。なので、正直、ここへ来て初めて考えたんですよ。何のために働いているんですかって言われると、まだ答えは出ないです。ここへ来て逆に難しくなりましたね

20代男性
20代男性

年齢とともに変わると思うのですが、今の自分としては「自己表現」だと思っています。仕事とはある意味、他人がやりたくないものを指すものだと思うんです。それは例えば、お金のある人は家事の代行を雇ったりする…。誰かのやりたくないことをやることが仕事のようにも思っているんです。

ただ「仕事=やりたくないもの」ともいえないなと思う気持ちもあって。やはり、やりたい仕事は存在すると思うし、部分的ではあるけど、自己表現が仕事の中でできている場面もあります。いかに仕事の中で自己表現ができるかが「働く」ということだと思う。仕事のやりがいは、いかに100%自己表現できているという状態にもっていけるかということだと思うのです。

20代女性
20代女性

生きるために必要なことです。このような体調不良になるまでは「働かないでお金が入ってきたらいいのにな~」と思うこともありましたが、健康で不自由なく働けることは幸せなのだと「元気」をなくして実感しました。労働がお金のためだけでなく、生きがいに繋がったらいいな…と思う今日この頃です。

みなさんのリカバリーゴール今後の目標を教えてください。

50代男性
50代男性

「持続可能な仕事、充実感のある生活」 こちらのプログラムでは、リカバリーゴールというものを立てていて、IMRの授業の中で、リカバリーや病気の自己管理の勉強をしています。目標を持つことって大切なんですよね。なりたい自分像を作って、それを大目標に、具体的なスモールステップをつくっていく…私の大目標は「持続可能な仕事、充実感のある生活」です。仕事は続けることに意味があるわけのではないのですが、やはり続かない仕事では困りますからね

20代男性
20代男性

「人生楽しく生きよう」 試行錯誤が続いています。目標としては、さっきから伝えているように、自己表現できることを100%の状態に持っていくこと。平和に暮らしたいし、仕事はつまらないものって決めたくないですし。どれだけ仕事の中で楽しめるか、どれだけ人生を楽しめるか…やはり人生というものは仕事が大半をしめますので、なので、自己表現ができるような仕事の仕方をしていきたいと思っています。

20代女性
20代女性

「こころに余裕をもって生きる」 短期目標はとりあえず、復職することです。自他ともに「もう大丈夫」の判断ができること、気負わずに「やってみよう」と思えるようになることです。つまずいて再休職にならないように、今は焦らず治す、対策を練るときだと思っています。…と言っても少し焦ってしまっているのですが。

長期目標は復帰してからお役に立つことです。お仕事面もそうですが、一緒に働く仲間が今の私と同じように悩んでしまうことがあったら、リワークで学んだことを生かしながらサポートできたらいいなと思います。「病気になってしまっても、悪いのはあなた自身じゃないんだよ」と伝えたいです。今は女性も寿退職などせず、定年までor定年を過ぎてからも働いていらっしゃる方が多いので、私も尊敬する伯母や上司、先輩方、リワークのスタッフ、メンバーの皆さまを含め、周りの皆さまのようにいつか家庭をもっても辞めず、全うするまで働き続けたいです。

インタビューを終えて

皆さんの大切な心の中を教えていただきました。本当は誰にも話さずに秘めておきたいこともあったかも知れませんが、それを分けてくださったのだと思いました。

皆さんの言葉一つ一つに重みがあり、「あずかりました、届けますね」という気持ちを私も抱くことができました。

「持続可能な仕事」この言葉が、私の中に印象的に残っています。私は、私の心はいつまでも前向きに頑張ってくれると信じています。でも、私も頑張れなかった時期があります。自分を知るということはとても難しく、自分と向き合うということはそう容易いことではありません。

「わたし」と向き合うリワークのプログラムを拝見し、きっと誰もがこの発想で自分を見つめることができたら、もっと自分に対しても、相手に対しても「尊重する」というが具体的になるのだろうと思いました。

皆さんの大切な時間と大切な経験を分けてくださり、どうもありがとうございました。

こちらも合わせてご覧ください

医療法人社団清心会 藤沢病院

住所:〒251-8530 藤沢市小塚383

電話:0466-23-0909(デイケア直通)

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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