インタビュー

復職の先の「生き方」を、藤沢病院が大切にするリカバリー志向(藤沢病院リワーク 女性スタッフ・男性スタッフ)

2013年5月から始まった藤沢病院のリワーク。体や心に不調を抱き休職をする方が復職に向かう中で、精神科や心療内科がおこなう復職プログラムに参加する場合があります。復職プログラムとはどのようなものであるのか、また、藤沢病院のリワークにはどのような特徴があるのか、リワーク女性スタッフと男性スタッフに伺いました。

「リワークというと復職をすることがゴールのように見えますが、藤沢病院のリワークはそれだけではないんです」復職という言葉通り、職場に戻るということを目標にしていますが、大切にしていることはその先にある「どう生きるか」という『生き方』であると。リワークプログラムを見学すると、自分自身の「生き方」を考え、自分と向き合い対話する参加者の皆さんがいらっしゃいました。私はこれまでこういった時間を取ったことがあっただろうかと、プログラムの価値を感じずにはいられませんでした。

当院リワークでは、復職することご本人の自信が病気や症状に左右されずに充実した生活を送れるようになること(リカバリー志向)を目指します。そのために自己理解を深め、生活リズムの改善、病気の理解、ストレス対処法などの習得を行い、ご本人が主体的に再発予防に取り組めるよう支援します。

藤沢病院「リワーク」基本理念(引用)

詳しくは、藤沢病院のホームページへ

このプログラムを通して、大切にされていることを教えてください

女性スタッフ
女性スタッフ

体調管理スキルが上達して、復職に関わらず、今後の生活がより過ごしやすくなるように、リワークで学びを深め、今後に役立てていただければと思っています。複数人で取り組みを行うため、グループで悩みを共有したり、困りごとについて意見を出し合ったり、人と関わることでひとりではできない温かみのある経験を積める場でありたいと心掛けています。

男性スタッフ
男性スタッフ

藤沢病院の特徴でもあるのですが、「リカバリー志向」という考え方を大切にしています。もちろん「復職する」のは大切な目標ですが、それはひとつの手段であって、ここでは生き方を考えてもらう機会を大事にしています。自分自身の人生の目標であるリカバリー目標(リカバリーゴール)を皆さんに立てていただき、自分自身がどう生きていきたいのか、その中で「仕事」は自分にとってどんな位置づけなのか、プログラムを通して自分自身を見つめる機会をつくっています。

スタッフとしてのやりがいや喜びは?

女性スタッフ
女性スタッフ

「リワークにきて良かった」とメンバーさんに言ってもらえるときですね。あとは、「自分のことだけど、自分では気づけなかったことにたくさん気づけた」ですとか「リワークに来なければ、こんなことは一生学べなかった。病気になったことはマイナスだったけど、リワークに通えたことはよかった」と言ってもらえたことです。

男性スタッフ
男性スタッフ

僕も同じような感じです。「ここへ来ることができて良かった」という言葉は嬉しいです。「リワークで自分の生き方を見つけたから、仕事の一喜一憂に動じなくなった」とか、リカバリー志向というものが活きているのを聞けるのも嬉しいですね。メンバーの皆さんは、最初ここに来た頃は、やはり落ち込んでいる姿であることが多いので、プログラムを通して、自分の長所を見つけて、自信をつけて、姿が変化をしていく場に立ち会えるのも喜びです。

印象的なエピソードなどはありますか?

女性スタッフ
女性スタッフ

リワークを卒業するときの挨拶で「休職したばかりの頃は人間不信に陥っていたけど、ここ(リワーク)に来て、人っていいものだなと少し思えるようになった」と涙ながらに言ってもらえたことです。他にも、リワーク中も調子を崩して、休みがちだった方がいたのですが、当初の予定より数か月も通所が長引いたものの、一緒に振り返る時間を取りつつ無事に卒業することができ、復職し、その仕事が今でも継続できていたり…印象に残っていますね。

男性スタッフ
男性スタッフ

「まだこんなに優しい場所があるんだ」って言葉ですかね。ここに来ている皆さんは、何らかの傷つく経験をしている方が多いんです。人間不信になってしまっているケースももちろんありますし、その方が言ってくれるこの言葉には多くの想いが詰まっているなと。最後に好きな歌手の詩の一節を紹介して、卒業していった方もいたのですが、自分らしさを出せるようになるってすごくいいことだなと思っています。

メンバーの皆さんを見ていて感じる、「働く」とはどういうものだと思いますか?

女性スタッフ
女性スタッフ

働くことが、自分を犠牲にする、ないがしろにする、といったものであると、どこかでガタが来てしまうものです。自分という軸を持ち、何かがあった時には考え、選択をして…という主体的な働き方が、良い体調にも、自分のやりがいにもつながる前向きな「働く」だと思います。

男性スタッフ
男性スタッフ

人それぞれだなと思います。人によって「働く」意義はさまざまで、家族のために働きたいという人もいるし、つらい経験をしたから復職したら、支える立場になりたいという人もいるし。ただ、共通して思うのは、職場や働くことに対して、諦めや妥協の気持ちを持ったまま復職してほしくないなと。復職の先にある生き方というか、リカバリーゴールを大切にできるようになってもらいたいし、「働く」とは、その中のひとつの手段なのだと捉えてもらいたいかなと思っています。

インタビューを終えて

藤沢病院の大きな特徴は「リカバリー志向」です。

自分自身が病気や症状に左右されずに充実した生活を送れるようになること(リカバリー志向)つまり、「こう生きたい」という生き方の目標を立てること

これは決して、こころの病を患った方にのみ必要なものではありません。どう生きたいか、何を大切にしたいか、私らしく生きるとは何であるのか?

この問いを、生きるすべての人が自分自身と向き合う時間をつくることができたら、どんなに豊かだろうと思います。

藤沢病院のプログラムでは、自分の考え方の再構築運動などがあります。認知行動療法に基づいて自分を外から見つめ、自分自身を知り、ストレスの対処法や自己主張のクセ、自分自身の「ものの考え方」について考えていきます。単にワークをやるだけではなく、実際の場面を想定して「何%くらい実行できそう?」などと会話をしながら、楽しく進めていく―

メンバーの皆さんの声を聞くと、自分自身と向き合うということが、いかに大切な作業であるかを実感します。つづきは、ぜひ、メンバーの皆さんの記事をご覧ください

こちらも合わせてご覧ください

医療法人社団清心会 藤沢病院

住所:〒251-8530 藤沢市小塚383

電話:0466-23-0909(デイケア直通)

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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