インタビュー

気軽に相談できるホームナースに(ゆいまーる訪問看護ステーション 管理者・看護師 吉原望美さん)

11月2日、藤沢市羽鳥に新たな訪問看護ステーションが開所しました。ゆいまーる訪問看護ステーションの看護師であり、管理者の吉原望美さんにお話を伺いました。地域の中で人は生きている、そのフィールドで看護師としての専門性を生かして、多くの人に安心を届けたい…これまでのキャリアを生かし、たくさんの想いをもって新しいステージへ。はつらつとした元気な声と太陽のような笑顔、一瞬にして、吉原さんと患者さん・利用者さんとの温かい関わりが目に浮かぶようでした。

事業所の名前でもある「ゆいまーる」、これは沖縄の言葉で「助け合い」や「人との結びつき」を意味しています。生活に寄り添い、医療と福祉をつなぐ存在になれる、地域の中の看護師さんにクローズアップしていきます。

吉原さんが訪問看護に関心をもったきっかけを教えてください。

吉原望美さん
吉原望美さん

東京の養護学校で保健室の看護師をしていたことがあり、そこで吸引・吸入・経管栄養など医療的ケアが必要な生徒さんと、一日を通して関わることで、家族の大変さを感じました。病院で働いていた頃は子ども本人と関わることが多く、もちろん家族の大変さは想像していましたが、学校へ異動し、家庭全体と関わることが多くなることで、改めて実感したのを覚えています。

家族が休息をとり、子どもたちが笑顔で過ごせるように、看護師として何か役に立てないかと考え、訪問看護に関心を持つようになっていきました。その後、藤沢市内の病院の地域包括ケア病棟での経験が、訪問看護への転身につながっています。病院では、本人や家族の想いを傾聴し、希望を叶えられるように退院後の生活を見据えて調整をしてきました。特に看取りのケアでは家にいたときと同じように環境を整えたい…とさまざまな工夫をしました。

よりよいケアをするためには、地域との連携は不可欠ですし、地域との調整役という仕事が自分に合っていたということもあります。病院と地域が連携するためには、双方からのアプローチが必要。それなら、私が地域に出て、今度は外から病院の中に入っていくという形もいいのでは?と、その頃に考えたんです。

吉原さんの大切にされてきた看護の分野に、小児看護があると伺います。どのようなことを大事にしてきたのでしょうか

吉原望美さん
吉原望美さん

子どもと家族に安心感を与えて笑顔になってもらうことです。安心してもらうというのは、簡単なことではなくて、私たちにできることは「看護」という専門的な知識や技術を持ちながら、寄り添えること。その両方があることで、心も身体も安心できるのだと思います。

印象に残っているエピソードはありますか?

吉原望美さん
吉原望美さん

都内の小児病院で、働いている時に、糖尿病を持つ子どもを受け持ったことがきっかけで、先輩と一緒にボランティアで糖尿病をもつ子どものキャンプに参加したことが印象に残っています。そこで、私たちは親元を離れて、自分でインスリンを打つ子どもたちのたくましさと、夜中に低血糖になり、糖分を補給しなければ、死に至るという状況を間の当たりにしました。

子どもたちも不安と日々闘っていますが、それ以上に、親も毎日眠れない日々を過ごしながら、子どもと病気と向き合い、全身全霊をかけていることをキャンプを通して肌で感じました。医師や看護師、ボランティアの学生達が、少しでも助けになりたいと参加されて、一体となって、子供たちとその先にいる家族を応援したキャンプが今も強く印象に残っています。

地域における看護師さんの役割は何でしょうか?

吉原望美さん
吉原望美さん

先ほどのエピソードともつながるのですが、地域に出ていくと、病院の中では見られなかったその後の姿を目にすることがあります。病院の中で必死に頑張っていた方も、自宅に戻り、ふっと我にかえり、不安が募ってくることもあると思います。だからこそ、地域の中にある看護の役割は大きいのだと思います。

地域における看護師の役割は、病院や施設等と地域との橋渡しだと思います。いかに情報を分かりやすく地域の方々に伝えていくかも重要だと思っています。看護という視点から、生活に寄り添い、その方の生活を知っているからこそ、福祉と医療の橋渡しもできる立場ではないかと思っています。

吉原さんはどのような社会や地域を目指していきたいでしょうか?

吉原望美さん
吉原望美さん

事業所の名前のゆいまーるという言葉は、人と人との繋がりや助け合いという意味があります。その言葉のように、助け合いの輪が人々の手から伝わって大きな輪になるような地域や社会を目指していきたいです。 一家にひとり、いつでも気軽に相談出来るようなホームナースが近隣にいて、その地域を支えていけたらいいなと思います。資格として看護師を持っている人も多くいるため、そういった潜在的な看護師さんが活躍できる場が増えると、支える方も孤独にならず輪が広がるのではないかと思っています。

「連携」というものも、とても大切だと思います。多くの職種が地域の中にいて、利用者さんとつながっています。だからこそ、福祉と医療の連携や多職種が各々の良いところを出し合い、学び合い、手をとりあっていくこと、これが、利用者さんと家族を見守るとても重要な要素だと感じています。こういった連携が当たり前になる社会を目指していきたいです。

ふたりで同行訪問にいってきます~!ここには写っていませんが、志のある地域の看護師さんが集まっています♬

インタビューを終えて

地域看護の可能性は無限大である、これは私も常に思っていることです。

藤沢市内で、小児看護や地域看護に熱い思いをもち、訪問看護ステーションを立ち上げるに至った先輩看護師さんに出会え、わくわくしながら取材に臨みました。「立ち上げたのは私ではないんですよ。良い出会いがたくさんあって今があります。」と笑顔で語る吉原さん。生活に寄り添いたい、少しでも不安を減らしたい、一緒にこの地域で生きていく…

サービスの先にある「想い」を多くの方に知っていただきたいと思いました。

看護師さんを気軽に利用してほしい。不思議と、家の中に看護師さんが来るというと、どこか緊張してしまうもの。

もっと身近な存在でありたいし、安心できる環境をつくるために専門職がいると思ってほしい

ぜひ、多くの方に吉原さんと直接お会いしてもらい、あの笑顔から元気をもらってほしいなと思いました。

こちらも合わせてご覧ください

ゆいまーる訪問看護ステーション

住所:〒251-0056 藤沢市羽鳥1-6-18

電話:0466-86-5717 FAX:0466-53-2228

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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