お知らせ

【活動報告】声で「読書の喜び」を届ける。音訳ボランティア講習会で見えたこと

藤沢市総合市民図書館の入り口

「福祉」と「アナウンス」。一見、別の分野に見えるこの二つですが、実は「情報を正確に、心地よく届ける」という点で、深くつながっています。

藤沢市からのご依頼で、藤沢市点字図書館で活動する音訳ボランティアの皆さんへ向けた「発声・発音・滑舌講座」を担当させていただきました。

2021年頃から続くこのご縁。これまでは講義形式が中心でしたが、今年はついに「録音室」を使った初の実践トレーニングを行いました!

11月14日と28日の2回にわたり、みっちりと(でも和やかに!)特訓を行った様子をレポートします。

手書きで書かれた講習会の案内板
手書きの案内板。「音訳」と「点訳」、それぞれのプロフェッショナルを育てる講座です。

音訳は「権利」を守る活動

音訳ボランティアの役割は、ただ本を読み上げることではありません。

視覚に障がいのある方への「情報保障」であり、「知る権利・楽しむ権利」を守る大切な活動です。

たとえば、「広報ふじさわ」のような生活情報をタイムリーに届けること。

そして、私たちが図書館で好きな本を手に取るように、視覚に障がいのある方も「読みたい本を、読みたい時に読める」こと。

そんな当たり前の日常を目指して、ボランティアの皆さんは日々、一冊ずつの本と向き合い続けています。

なぜ「技術」が必要なのか?

では、なぜそこでプロのアナウンス技術が必要なのでしょうか?

それは、「目で見える情報の代わり」を声でつくるためです。

私たちは普段、小説を読むとき、無意識に鉤括弧(「」)などの記号を見て、誰のセリフか、どんな場面かを補っています。

しかし、音声だけの世界にはその「視覚的な補助」がありません。

だからこそ、

• 「間(ま)」の取り方

• 声の「強弱」

• 明瞭な「滑舌」

これらを駆使して、文字情報の裏にある「空気感」や「文脈」まで正確に届ける必要があるのです。技術を磨くことは、聞き手への一番の思いやりとも言えます。

録音室での実践!

講座では、名作『走れメロス』や、北大路魯山人の『胡瓜』を題材に、実践的なトレーニングを行いました。

今回は録音室で、実際にマイクの前に座っての指導。

「家ではどんな環境で録音していますか?」と伺いながら、その方に合ったマイクの角度や原稿の位置を一緒に探っていきました。

グループごとの少人数制だったため、講師との距離も近く、「こういう時はどうすれば?」といった気軽な質問が飛び交う、とても濃密な時間になりました。

「聞く力」もトレーニング

そしてもう一つ盛り上がったのが、「各グループの録音をみんなで聞き合う」というワークです。

人の声を客観的に聞くことで、「あ、この間(ま)は聞きやすいな」「ここは少し速いかも?」といった具体的な気づきが生まれます。

自分以外の声を「分析して聞く」ことも、実は自分の耳を育てる最高の実践トレーニングなんです。

〈参加者の方の声〉
・「他の方の録音を聞いて、自分の読みと比べることができ、大変参考になりました」
・「『し』がきれいに出なくて困っていましたが、解決策が見つかりました」
・「プロの謙虚さ、かっこよさを感じました。質問へのお答えも的確でした」
・「『口を育てる』という発想、考え方に希望が持てました」
・「改善の余地がたくさんあると気づかせていただきました」
・「声の在り方……ナメてました!(笑)」 など

プロの職能を、福祉の現場へ

担当の方からは、「受講生に大変好評でした」という報告とともに、こんな嬉しいエピソードも教えていただきました。ある参加者の方が、「アンケートの紙だけでは思いの丈を伝えきれない!」と、わざわざ熱いお電話をくださったそうなのです。

そこまで心が動く瞬間をご一緒できたこと。それが何より嬉しく、現場の質を高めるお手伝いができたという確かな実感になりました。

アナウンサーとして培った「伝える技術」が、誰かの「本を楽しむ権利」を支える力になる。

「自分の職能(スキル)を活かして、福祉の現場を少し豊かにする」

これもまた、私が大切にしている「一般と福祉の橋渡し」のひとつの形です。

点字図書館の職員の皆さんや音訳ボランティアの皆さんと、これからも力を合わせながら、藤沢市に笑顔が増える活動をしていきたいです。

障がいのアナの活動を応援する

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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