むぎむぎ通信 vol.18「小さくて、ささやかで、ゆっくりなもの」

代表が書くコラム、柔らかく紡ぐ「むぎむぎ通信」です。

皆さんは、好きなもの、ありますか?
私の好きなものは、詩人・長田弘さんが書いた「最初の質問」という詩です。
この詩と出会ったのは、大学を卒業して養護教諭として働きはじめた年。
もう15年ほど前のことになります。
この詩は、小学校の国語の教科書に載っていたこともあり、絵本にもなっているので、
知っている方も多いかもしれません。
「今日あなたは空を見上げましたか?」
――そう始まる詩を読むたびに、
私の時間は一瞬止まり、自然と対話できていない自分に気づいたり、
日々の忙しさのなかで忘れていた大切なものを思い出したりします。

私たちは、人とつながり、自然とつながり、
“何をしなさい”と命じられることもなく、生きています。
この人生には、「やらねばならぬこと」など、一つもないのかもしれません。
けれども、私たちは何かを探しています。
人によって欲しいものは違っても、きっとみんな、
何かを求めながら生きているのだと思います。
「生きるとは何か」と考えるようになったのは、高校生の頃。
そこから20年以上、私はずっと“問い”のなかで生きてきました。
――私はこの「問い続けること」そのものが好きなのだと思います。
どう生きるか。どう生きたいか。
きっと死ぬ瞬間まで、私は問い続けたいのだと思います。

行く雲のように、流れる水のように。
自然の流れと、目の前にあるものを大切にしながら、
柔らかく、カタチを変えて生きていきたい。
大きなことを成し遂げたいわけではありません。
自分が目立ちたいとも思わない。
ただ、目に留まらないような小さなもの、
ささやかな瞬間、ゆっくりと流れる時間のなかに、
本当の美しさや豊かさがあるのだと伝えたい。

この世界は、まだまだ、大きいもの、速いものに価値があるように映っています。
でも、本当の豊かさは、もっと小さく、もっと静かで、もっとゆるやかな世界にある。
満腹になることが「足るを知る」ではない。
もっと小さく、もっとささやかに「満ちている」と感じられること。
そのことに気づけることこそが、
生きるということなのではないかと思うのです。






