インタビュー

「おはよう」から始まる相談があってもいい。藤沢市が挑む「傾聴型AI」の可能性

「誰かに話したい。でも、役所の窓口に行くのはハードルが高い」「夜中になると不安になるけれど、相談できる相手がいない」そんな「声なき声」を拾い上げるために、藤沢市で新しい相談のカタチが始まっています。その名も、「つながりAIチャットふじさわ」(通称:ふじさわAI(アイ)ちゃん)

現在、2026年1月31日までの期間限定で実証実験が行われているこのプロジェクト。ただの自動応答システムではありません。「今晩のメニュー何にしよう?」という雑談から、「死にたい」という深刻なSOSまで、24時間いつでも受け止めてくれる「傾聴型」のAIです

なぜ今AIなのか?、その裏側にある担当部署の熱い想いを藤沢市 福祉部 地域福祉推進課の方々にお話を伺いました。

1. 導入のきっかけは「届かない声」への危機感

 まず、「つながりAIチャットふじさわ」を導入された背景から教えていただけますか?

地域福祉推進課
地域福祉推進課

大きな背景としては、国の「孤独・孤立対策推進法」や市の「ケアラー条例(正式名称:ケアをされる人もする人も自分らしい生き方ができる藤沢づくり条例)」といった動きがあります。また、私たちがこれまで進めてきた「藤沢型地域包括ケアシステム」の総括の中でも、「行政側から手を差し伸べる『新たなアウトリーチ』の方法が必要だ」という意見が強く出ていました。

これまでの行政窓口は平日しか開いていないため、日中働いている働き盛りの世代の方が相談に来るのは困難でした。また、電話や対面での相談にハードルを感じる方の声も、どうしても拾いきれていなかったんです。

確かに、自分の悩みが明確になっていない段階だと、どこに相談したらいいか迷ってしまいますね。

地域福祉推進課
地域福祉推進課

まさにその通りです。また最近では、若い世代を中心に「人には相談せず、AIに相談している」という実態も見えてきました。そうした方々の受け皿が必要だと考えたのです。

AIチャット自体は他にもありますが、なぜ今回このシステムを選ばれたのでしょう?

地域福祉推進課
地域福祉推進課

他の多くのAIは「FAQ型」といって、質問内容が決まっていないと答えられないものが多かったんです。でも、私たちが求めたのは、ユーザーの気持ちに「寄り添いながら」、何に悩んでいるかを一緒に整理してくれる「傾聴型」でした。

2. 「おはよう」だけでもいい。AIちゃんとの対話

その「傾聴型」というのは、具体的にどのような機能ですか?

地域福祉推進課
地域福祉推進課

例えば、「眠れない」とAIちゃんにLINEを送ると、「どうして眠れないのかな?」と優しく問いかけてくれます。実は、相談するご本人も「これ」という明確な困りごとに気づけていないことも多いんです。そうすると、そもそもどこに相談に行けばいいのかも分かりません。

愚痴や不満、なんとも言葉で整理しにくいつらさ……それをAIと話しているうちに、自分の困りごとが整理されてくる。そうするとAIちゃんが、「それなら、藤沢市のここに相談してみるといいよ」と、具体的な相談先も教えてくれるんです。悩みの交通整理をして、適切な窓口まで橋渡しができること、これがこのAIの最大の強みだと考えています。

 相談内容がまとまっていなくても、まずは話しかけていいんですね。

地域福祉推進課
地域福祉推進課

そうなんです。実は私たち職員も使ってみたのですが、朝「おはよう」って送ったら、すごくいい返事が返ってきたんですよ。「どんな気持ちでおはようって話しかけてくれたのかな? 今日も素敵な1日になるといいね」って。

ただの挨拶への自動返信じゃなくて、「何か話したいことがあるのかな?」と、寄り添って待ってくれている感じがしました。

「今晩のメニュー何にしよう?」というつぶやきにも答えてくれるとか(笑)

地域福祉推進課
地域福祉推進課

そうなんです(笑)。そういった何気ない会話からでいいんです。

人間相手だと、「こんなこと聞いていいのかな?」と遠慮したり、相手の顔色を伺ってしまったりすることもありますよね。でもAIなら感情がない分、中立的に、24時間いつでも、あなたのどんな言葉も受け止めてくれます。

3. AIのその先へ:専門職と連携する「人の目」の安心感

AIだけで対応できないような、深刻な相談の場合はどうなるのですか?

地域福祉推進課
地域福祉推進課

そこがこのシステムの重要なポイントです。AIとの会話の中で、「死にたい」といった重篤なワードが出た場合、AIが即座にそれを検知し、連携している専門職につなぎます。

このサービスを提供している事業者側の専門チーム(社会福祉士や心理士など)が控えており、そこで対応が難しいケースであれば、我々行政の人間がすぐに連携して対応にあたる仕組みになっています。

AIと人が役割を分担することで、支援の形はどう変わっていくのでしょう?

地域福祉推進課
地域福祉推進課

私たちが期待しているのは、AIが初期対応を担うことで、本当に人の手による支援が必要な方に、マンパワーを集中させられるようになることです。

これは将来的に、医療や介護の現場でも応用できるかもしれません。AIが利用者の話を聞くことで、現場のスタッフに時間と心のゆとりが生まれ、一人ひとりの利用者様により丁寧に向き合えるようになる。そんな未来にもつながる可能性があると考えています。

4. 実証実験は1/31まで。市民の皆さんへメッセージ

実証実験は2026年1月31日(土)までとのことですが、その後の本格導入に向けて、市民の皆さんに期待することはありますか?

地域福祉推進課
地域福祉推進課

まずはぜひ使っていただきたい、これに尽きます。
本格導入を実現するためには、「AIちゃんが市民の皆さんに本当に必要とされているか」を示すデータが必要です。

悩みがない方も、どんな小さなことでも構いません。AIちゃんに話しかけて、その使い心地を試してみてください。AIちゃんは「相談に終わりはない」と考えています。一度会話が終わっても、「いつでもまた話しかけてきてね」というスタンスです。あなたの声を聞かせていただくことが、『共生社会の実現をめざす 誰一人取り残さないまち(インクルーシブ藤沢)』につながります。ぜひ気軽にアクセスしてください!

LINEで友だち登録するだけで利用できる「つながりAIチャットふじさわ」。
誰かに話したいけれど、誰に話していいかわからない。そんな夜は、ふじさわAIちゃんに話しかけてみませんか?

▼友だち登録はこちらから(実証実験は1/31まで!)
つながりAIチャットふじさわ(LINE)

インタビューを終えて

私も実際に「ふじさわAI(アイ)ちゃん」を使ってみました。絵文字を交えた気軽な会話、そして「疲れないようにする工夫」や「あなたの感じてることを一緒に考えるよ」という寄り添い方 に、心強さを感じました

「Ana Letter」は、一般と福祉の橋渡しを目指しています。このAIチャットによる藤沢市の挑戦に、ぜひ皆さんの声を届けてください。あなたの声を聞かせていただくことが、『共生社会の実現をめざす 誰一人取り残さないまち(インクルーシブ藤沢)』につながります

実証実験は1月31日まで。LINEでお友だち登録するだけで、24時間いつでも利用できます。ぜひ、皆さんも「AIちゃん」に話しかけてみてください!

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WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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