インタビュー

【高校生ライター】言葉をやさしくして、みんなが生きやすい未来を(湘南やさしい日本語プロジェクト 井上恵さん)

障がいのアナには、昨年から高校1年生の野元小暖さんがNPOインターンで来てくれています。

国際に関心があり、活動的な小暖さんは、これまでもAna Letterのなかでコラムを書いています。

今回は、「やさしい日本語」に興味をもち、湘南やさしい日本語プロジェクト代表の井上恵さんにインタビューをしました。この記事は、野元小暖さんが書きあげてくれたものです。

小暖さんのコラム
笑顔は連鎖する
「幸せ」のあり方〜体験を通して学んだこと〜

野元小暖
野元小暖

井上さんが「国際」とつながったきっかけを教えてください!

井上恵さん
井上恵さん

高校生のときに、「みんなと同じにしないと変」「違うと怖い」という感覚があり、日本の学校が窮屈に感じました

きっかけになったのは、アメリカに短期留学をしたときです。言語も違うし、文化も違うし、見た目も違うし、考え方も違う。でも、ありのままの自分でいることで仲良くなれることに気づきました

そのときに、外国の方とコミュニケーションを取るのは楽しいと思い、そこから日本語教師になり、今は「やさしい日本語」を広める活動もしています

野元小暖
野元小暖

「やさしい日本語」とは何ですか?

井上恵さん
井上恵さん

やさしい日本語とは、わかりやすくて簡単な表現で話すという意味の「易しい」と、優しい気持ちで相手に合わせて話す「優しい」という2つの意味を込めた日本語です。

なので「やさしい」と、ひらがなで書きます。

野元小暖
野元小暖

なぜ「やさしい日本語」を教えているのでしょうか?

井上恵さん
井上恵さん

外国の方が日本で暮らすときに、数千時間日本語の勉強をしても、日本語ネイティブの伝え方が難しいせいで、理解が難しいという方がいました。

そのとき、外国の方だけが日本語の勉強をがんばるのではなく、日本人も「やさしい日本語」で話せば、もっとコミュニケーションを円滑に進められると思い、「やさしい日本語」を多くの日本人に教える仕事も始めました。

野元小暖
野元小暖

日本人が「やさしい日本語」を学ぶのと、日本人が「英語」を学んで、外国人とコミュニケーションを取るという2つの方法では何が違うのでしょうか?

井上恵さん
井上恵さん

世界中の人とコミュニケーションをとるために、話者の多い英語を学ぶことも非常に大事です。しかし、日本国内では、「やさしい日本語」も外国人と会話をするツールの一つです

日本語をわかりやすくすることは、語学が苦手な日本人にもハードルが低く、簡単に外国人の方とコミュニケーションがとれるようになります。新しい言語として「英語」を学ぶより、日頃つかっている日本語をやさしくするほうが簡単な場合が多いと思います。

野元小暖
野元小暖

どのような場面で、「英語」と「やさしい日本語」を使い分けたほうがいいと思いますか?

井上恵さん
井上恵さん

話す相手や場面によって使い分けたほうがいいと思っています

たとえば、外国人観光客などは、英語のほうが伝わりやすい場合が多いのですが、日本に長年住んでいる外国人のなかには、英語を母語としない人もいます。

そのため、英語よりも日本語のほうがわかる人も多く、さらに「やさしい日本語」で話せばわかるという方が9割という調査結果もあります。

「英語よりも、やさしい日本語の方がわかりやすい」と感じている外国人も多いため、日本で外国人に出会ったときは「やさしい日本語」を入口にして、相手にどの言語だったらお互いがコミュニケーションできるのかを確認していくことが大切だと思います。

野元小暖
野元小暖

具体的にどのような言葉がやさしい日本語なのですか?

井上恵さん
井上恵さん

『はさみの法則』をつかいます。
【は】はっきり言う
【さ】さいごまで言う
【み】みじかく言う


また、話すときは訓読みの言葉を選びます。

たとえば、「館内禁煙となっておりまして…」ではなく、「建物の中で、たばこを吸わないでください」と、はっきり最後まで伝えること。また、「館内」「禁煙」のような漢語より、「たばこ」「吸う」のような訓読みの言葉のほうが、易しいです。

日本語は言葉が豊かで多くの表現がありますが、相手の立場に立って、相手がわかるように言葉を調整する気持ちが大切です
参考:湘南やさしい日本語プロジェクト「やさしい日本語とは」

野元小暖
野元小暖

以前、外国の方から日本人は偏見が多いという意見を聞きました。偏見の原因になる、私たちの「あたりまえ」はどこからつくられていると思いますか?

井上恵さん
井上恵さん

「あたりまえ」は、その人が生まれて育ち、生きてきた道からつくられていると思います。

たとえば、多様な人と出会っていたら、多様な価値観がインプットされているので、違う考えも受け入れやすいです。反対に、意識していろいろな人と話そうとしない人は、日常で違う文化に触れたり、違う価値観をもつ人と出会う機会が少ないと思います。

すると、固定概念が偏りがちになってしまい、多様な人を受け入れられないと考えてしまうのかなと思います。

野元小暖
野元小暖

私たちの「あたりまえ」はどうしたら、多様なものになると思いますか?

井上恵さん
井上恵さん

外国人と日本人という区切りだけでなく、障がいの有無やマイノリティの人など多くの人がいて、価値観は一人ひとり違うものです

自分だけのコミュニティに収まるのではなく、たくさんの人に出会うことを大切にしていけたらいいなと思います。

野元小暖
野元小暖

日本の教育は「やさしい日本語」を教えるよりも、「英語」を教えて外国人とコミュニケーションを図ろうとしていますが、「やさしい日本語」もカリキュラムの一環として教えていったほうがいいと思いますか?

井上恵さん
井上恵さん

教えていったほうがいいと思います。

日本国内の国際化に対して、柔軟に関われるようにするためにも「やさしい日本語」が必要になってくると考えます

さらに「やさしい日本語」を学ぶことは、私たちの日本語能力や英語能力の向上にも関わります。「やさしい日本語」を基礎教養としてやっていけたら素晴らしいと思います。

野元小暖
野元小暖

最後に、地域の皆さんに伝えたいことはありますか?

井上恵さん
井上恵さん

「伝える」だけでなく、いろいろな日本語を「受け止める」ということを大事にしてほしいです

世の中には、外国人だけでなく、コミュニケーションに障がいのある人たちが多くいます。外国人の日本語、耳が聞こえない人や吃音の人の話し方などをいじりの対象にすることなく、みんなで当たり前に受け入れていけるようにできたらと思います

「やさしい日本語」は、外国の方のためと思われがちですが、日本人のためでもあります。

外国人や障がいのある人、いわゆるマイノリティといわれる人々が、ありのままの自分でいられる社会になってほしいと願っています。それは、きっとみんなが生きやすい社会につながるはずです。

まずは、日本語のコミュニケーションで困っている外国の方と、日本人が上手に「やさしい日本語」をつかってコミュニケーションをとることです

その過程で、今までコミュニケーションをとることが難しかった方など、多様な人と出会い、多様な価値観に触れて、たくさんの違いを肯定できるようになったら素敵だなと思います。そして、みんなが生きやすい未来をつくっていきたいです

インタビューを終えて

初めてのインタビューで緊張しましたが、貴重なお話をたくさん聞くことができ、とても楽しかったです!

今回のインタビューで、私も日本語教師に興味が湧きました。日本の中でも国際交流ができるよう外国人と話す選択肢を増やしていきたいなと思いました!

井上さんがおっしゃっていた多様な人と出会い、多様な価値観に触れて、たくさんの違いを肯定できるように、そしてみんなが生きやすい社会をつくれるように、これから頑張っていきたいです!

NPOインターン高校1年 野元小暖 

WRITER

障がいのアナ

いつも「障がいのアナ」をご覧いただき、ありがとうございます。

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