「あなたは、ひとりじゃない」心の不調は誰にでも起こるもの、決してひとりで悩まないでほしい(藤沢市保健所 保健予防課)
毎年9月10日から16日は「自殺予防週間」です。藤沢市保健所の保健予防課では、心の健康にまつわる取組みを実施しています。心の不調は、特定の人に起こるものではなく、誰にでも起こりうるものです。ストレスの感じ方や自分に合う対処法も、人それぞれ違うため、丁寧に向き合っていくことが大切です。
自殺予防週間に合わせ、保健予防課がおこなっている事業について伺いました。相談窓口等のリンクも各種用意しています。誰でも心の調子を崩すことがあります。身近なものとして、考えるきっかけにしてもらえたら幸いです。
保健予防課はどのようなことをやっている課なのでしょうか?
保健予防課は、私たちが所属する精神保健担当と、感染症や難病の事業をおこなう保健予防担当があります。精神保健担当では、心身の不調を感じる方、不安や悩みを抱えている方のご相談をお受けしています。ご本人だけでなく、ご家族、会社、学校などからの相談も可能です。
その方の抱える生活上の困難さや生きづらさに関するお話を伺わせていただき、必要に応じて、専門機関と連携しながら、対応しています。電話相談をはじめ、さまざまな相談方法がありますので、ご活用いただき、必要な支援を一緒に考えていければと思います。
心が不調になりやすい方に、特徴や傾向はあるのでしょうか?
心の不調は、誰でもなりうるものです。「精神科」と聞くと構えてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、心の不調は、特殊な病気ではありません。症状や状態も千差万別で、診断名がつく方もいれば、一時的に心が不調になっている方もいます。誰にでも起こる身近な課題として捉えてもらいたいです。
日常の生活の中でストレスを受けることは自然なことですが、ストレスの感じ方には個人差があります。適度なストレスは、やる気や集中力を高めてくれることもありますが、ストレスが大きすぎたり、長く続いたりすると、心や身体に影響が出ることがあります。人それぞれ感じ方は違うため、「このくらいなら大丈夫」「これまでは平気だったし」と比べて判断をしないようにしてもらいたいです。
心の不調に気づくサインなどはあるのでしょうか?
影響の出方も、人それぞれ異なります。
今の自分に自信が持てない、食事を摂った気がしない、夜眠れない、頭が痛い、お腹が痛い、ずっとイライラしている、「消えたい」「いなくなりたい」と思う、自分自身を傷つけてしまう…
あくまで一例ですが、このような症状が出ている方は、心がSOSを出しているのかもしれません。心が「これ以上耐えられない」と悲鳴をあげている状態なので、早めの対処が必要です。
心の調子を崩しているなと気づいたら、どうしたらいいのでしょうか?
心の不調を感じたときは、無理をせず、休んだり、相談したりすることが大切です。身近な家族や友人に自分の感じていることを話してみて欲しいなと思います。また、定期的にかかっている医療機関や保健所の電話相談なども活用してもらいたいです。
身体の傷は目に見えますが、心の傷は言わないと見えません。なので、話してみることが大切です。想いを言葉にすると、自分の気持ちをあらためて知ることができます。自分を客観的に見ることができるので、気持ちが整理され、心の苦しさが少し軽くなるかもしれません。それでも、心の調子が良くならない場合は、医療機関に受診することが必要です。
対処法も人それぞれ違うものでしょうか?
藤沢市がおこなっている精神保健に関する事業を教えてください。
保健予防課では、精神保健に関するさまざまな相談や講演会などを実施しています。また、団体支援として当事者会や家族会の支援をおこなっています。
自殺予防の観点では、まごころホットラインや心の健康教育、ゲートキーパー養成講座などをおこなっています。
※事業に関する紹介とリンクを掲載!
※その後もインタビューは続きます!
精神保健に関する各種相談
心の不調を感じたら、人に話してみましょう。話すことで、自分自身に気づけたり、ストレスを整理したりすることができます。保健所では、保健師や福祉職などを中心に電話による相談等をお受けしています。詳細は、藤沢市のホームページをご覧ください。
まごころホットライン
まごころホットラインは、自殺未遂者・家族のための電話相談です。受付時間等の詳細は、藤沢市のホームページをご覧ください。
精神保健に関する当事者・家族会
藤沢市内には、ふれあい会(認知症の方を介護する家族)、つぼみの会(ひきこもる家族をもつ親・兄弟等)、断酒会(お酒に関わる問題を抱える人)、絆会(若年性認知症本人と家族)、藤沢わかちあいの会(大切な人を自死で亡くした人)などの集まりがあります。同じ悩みを抱えているからこそ、共感できることもあります。詳細は、藤沢市のホームページをご覧ください。
精神保健に関する教室・講演会
統合失調症やうつ病など、心の病気を患うご本人やご家族、一般の方を対象とした教室、講座、講演会を開催しています。心の不調は周囲に相談しづらく、自分で抱え込んでしまうケースも多いです。病気の正しい理解は支援の一歩のなります。詳細は、藤沢市のホームページをご覧ください。
ゲートキーパー養成講座
「ゲートキーパー」とは、こころに不調を抱えていたり、自殺に傾くサインに気づき、対応する人のことです。藤沢市では、保健所職員が講師となり、1時間程度の養成講座をおこなっています。詳細は、藤沢市のホームページをご覧ください。
メンタルチェックシステム「こころの体温計」
心の不調は、自分ではあまり気づけない場合もあります。藤沢市には、客観的に自分自身のメンタル状態を把握できる「こころの体温計」をいうシステムがあります。詳細は、藤沢市のホームページをご覧ください。
現在配信中! 令和5年 藤沢市自殺対策講演会
配信期間:9月11日(月)~9月24日(日)
配信方法:申込者限定のオンライン動画配信
申込受付期間:8月10日(木)~9月24日(日)
自殺予防対策に必要な「ゲートキーパー養成講座」について、詳しく教えてください。
繰り返しになりますが、心の不調は誰にでも起こるものです。自死や自殺も同じで、自分の身近なところでも起こる可能性があります。身近なものだからこそ、学校や職場など、地域のなかで見守ってもらえるように、ゲートキーパー養成講座を実施しています。
心の不調を抱いている方が自殺に傾くときのサインに気づき、ひと声かけられる人を増やしています。講座では、気づきのポイントや声かけ、本人の気持ちを受けとめる傾聴や見守り、必要に応じて専門機関を伝えていく方法を講習しています。また、若者の自殺対策として、子ども向けに「SOSの出し方教育」もおこなっています。
今年の自殺予防週間に合わせた取組みを教えてください。
自殺予防週間は9月10日から9月16日、自殺対策強化月間は3月です。この期間は、藤沢市周辺や湘南台駅などに横断幕を掲げたり、江の島シーキャンドルを自殺対策カラーであるグリーンにライトアップしたりなど、普及啓発をおこなっています。
動画配信による「藤沢市自殺対策講演会」は、9月24日までご覧いただけます。テーマは「若者が抱える生きづらさ~『つながり孤独』の広がり~」、講師は筑波大学人文社会系教授の土井隆義さんです。ご興味のある方はぜひお申込みいただき、ご視聴ください。▶︎詳細・申込み(藤沢市HP)
心の不調に対して、自分でできる対策はあるのでしょうか?
「気づき」が最初の一歩になります。いつもと違ってよく眠れない、食欲がなくなってきた、人の集まりが好きだったのに最近はちょっと…など、「いつもと少し違う」という変化に気づき、人に話してほしいなと思います。
自分の気持ちをノートなどに書き留めるのも良い方法です。ちょっとした変化に気づき、周りの人や相談窓口に伝えるようにしてみてください。
自分の話をしたり、相談が苦手な人もいると思います。周囲ができる対策などはあるのでしょうか?
周りの人が声をかけることは大事です。気になることがあれば「眠れている?」「何かあった?」「よかったら話してみて?」などと声をかけてほしいです。
そのときにすぐ話せる人もいれば、話せない人もいます。その場で相談してもらうのが目標ではなく、気にかけていることが相手に伝わることが大切です。すぐに話せなくても、あとから「やっぱり相談してみよう」と気持ちが変化することもあります。
「気にかけているよ」というサインは、次の関わりにつながります。まずは「ひと声かける」から始めていきましょう。また、相談を受けたときは「解決しなくては」と思いがちですが、アドバイスよりも、その人の想いを受け止めるように話を聞き、楽になってもらうことが大切です。
最後に、私たち市民はどのようなことを心がけて生活したら良いのでしょうか?
自殺の背景には、精神保健上の問題だけではなく、過労、生活困窮、育児や介護疲れ、いじめや孤立などの社会的要因があることが知られています。自殺に追い込まれるという危険は誰にでも起こりうるものです。
それぞれが自分の心と向き合い、健康的な付き合い方を見つけていくことは必要ですが、ひとりでは解決できないこともあります。少しつらいな…と思ったときに「休みたい」「代わってほしい」「今日の自分にはできない」などと、職場でも家庭内でも、周囲にサポートを求めることが重要です。
お互いに見守り、支え合うことで気づき、困りごとを抱えた方が相談機関につながる体制をつくり、市民の皆さんとともに「いのちを支える藤沢市」をつくっていきたいです。決して、ひとりで悩まず、ご相談ください。
インタビューを終えて
「人それぞれ感じ方は違う」こう頭で理解はできていても、集団のなかにいると「周りと同じように」という意識が働いてしまいます。とりわけ、ここでいう『周り』とは、その集団のなかで目標に近い動きをしている理想の人を指してしまう場合が多いように思います。
「このくらいできて当たり前」「みんなもやっている」「助けてなんて言えない」、ストレスの感じ方も対応力も人それぞれ違うと分かっていても、本人も周りも、集団が生み出した「周りと同じように」から逃れられなくなっていきます。無意識に作動してしまうその感覚を、努めて「人それぞれ感じ方は違う」と念頭に置き、集団ではない一人ひとりを見ていくことが必要なのだと思います。
「言ってくれれば配慮したのに」「そこまでつらいとは思わなかった」「ひとりなんかじゃなかったのに」、本人が伝えづらいこと、周りが気づきづらくなること、『集団』は自然と感覚を鈍麻にさせます。誰も悪ではないのに孤立と孤独が生まれる。集団に飲まれず、努めて「一人ひとりを感じ合う」というゆとりを、お互いにもてる社会をつくっていきたいです。