コラム

【活動報告】横浜瀬谷高校「車いす・医療的ケアを知る」(ゲスト講師:富永夏生さん、ご家族)

神奈川県立横浜瀬谷高校と共生社会プロジェクトをおこなっています。

1月15日(月)は、医療的ケアの必要な富永夏生さんとご家族(崇之さん、良子さん)にゲスト講師として来ていただきました。富永ファミリーには、以前、Ana Letterでも取材させていただいています(取材記事:親亡きあとも、地元で生きる)。

これまでの授業の様子:11/27

横浜瀬谷高校とのコラボレーション

横浜瀬谷高校の2年生は「総合的な探究の時間」のなかで16プロジェクトに分かれ、探究学習を進めています。共生社会プロジェクトには14名の生徒が参加し、多くの人が暮らしやすい地域を目指して、共生社会について学んでいます。

障がいのアナは、そのプロジェクトの一部をお手伝いしています。生徒たちに新しい気づきと考える力を養ってもらえるよう、楽しい授業をつくっていきたいと考えています

授業の内容

今回は、車いすで医療的ケアの必要な富永夏生さんとご家族にゲスト講師をお願いしました

授業の内容は、【ミニ講演】、【一緒に街歩き】、【振り返り・質問タイム】です。

ミニ講演

夏生さんの生い立ちやご家族の自己紹介に始まり、医療的ケアについて教えてもらいました。分かりやすいように、生徒たちには起床から1日の生活動作を思い返してもらい、そこから、夏生さんの1日を伺いました。

1日の生活のバリエーションは同じですが、そこに、日常的な医療的ケアとして、胃ろうや吸引があります。外出をするときには、多く機器や専用の物品を持っていきます。

吸引は、吸引カテーテルを気道内に入れて、痰などを取り除く大切なもの。車いすの足元にセットして持ち歩いている吸引器の使用方法も紹介してもらいました

参考:横浜市「医療的ケアってなんだろう?」

一緒に街歩き

外に移動し、いざ出発!

共生社会プロジェクト担当の萩原拓己先生に授業時間内に行ける散策コースをつくってもらいました。今回は、生徒たちの通学路でもある道を大きく一周するコース(写真:①コース)を歩きました

街歩きをしながら、交代で車いすの介助体験。学校周りは高低差があり、多くの斜面がありました。

また、車道側に向かう路面の傾斜があることや、ポールや植木、枯れ葉の山などがあり、道幅がさらに狭くなっている箇所があることも実際に歩くことで発見できました。

地域のなかで暮らしていれば、当然、人や自転車とすれ違います。そのときの心遣いやコミュニケーションの大切さも教えてもらいました

振り返り・質問タイム

散策を振り返りながら、車いすの特徴や外出時の持ち物、災害時のお話をしてもらいました。医療的ケアに必要なものはスーパーやコンビニなどで手に入らないことも教えてもらいました。

生徒たちからの質問は「どのように夏生さんとコミュニケーションをとっているのか」「夏生さんは音楽を聞くのか」など、率直な内容が多く、とても良い機会になりました。

感じたこと・気づいたこと

生徒たちは、このような気づきを感想として寄せてくれました。感想の一部を紹介します。

私たちが普通に歩いていて感じないような道の傾きが、車いすを押すとすごく影響されているのを感じて、わずかな段差や斜面もすごく大変そうだと感じました。

道幅や道の状況など、車いすを押してみて押しやすいとは思えず、大変だと感じた。

道の狭さだったり、立地の悪さ、草の多さなどが気になった。これらをなくせば、車いすも通りやすいのに、と思った。

普段の生活のルーティンを聞いて、自分たちとどのような部分が異なるのか知ることができた。地域散策では、普段は何も気にせずに歩いていたけれど、実際に車いすを押してみて、どのような道が通りにくいのか知ることができた。

道が少しガダガダしているだけで車いすの操作が不安定になってしまったり、急な上り坂や下り坂など、普段何気なく自分が通っている場所でも、人によっては気をつけなければならないところになり得ることが分かりました。

普段気づかないような、道の不便さに気づくことができた。

初めて見るタイプの車いすを使用していて、知らなかったことを多く学ぶことができた。たとえば、後輪の後ろに小さな車輪があって、それは後方への転倒を防止する役割があることを知った。

車いすなど、その人のためによく考えられていると思った。

夏生さんの車いすはとても複雑で、転倒防止の仕組みや夏生さんに必要なものがたくさん組み込まれていて、車いすを見るだけでも大変なんだなと感じました。

60kg以上あるのに、意外と押しやすくて、驚きました。しかし、下り坂は手を離してしまったらと思って少し怖かったです。逆に上り坂は結構重くて腕が疲れました。

災害時に医療ケアに関するものは支給されず、物資が途絶えてしまうと命に関わってきてしまいます。これを機に防災の見直しをする必要があると考えました。

また、普段は気がつけない道のわずかな傾きで車いすが横に流れていってしまいました。実際に体験しないと気がつけないことは想像以上にあると知りました。なので、もっと積極的に体験できる機会を増やしていきたいです。

最後に、重い車いすは今は問題なくても、両親の年齢が上がるごとに課題となっていくと思います。このように、これからの人生の方が大変なことが多いのではないかと感じました。その人の人生を考えた長期的な支援という考え方を中心にこれからの学びをいかしていきたいです。

普段何気なく毎日通っている道は、障がい者にとっては危なく感じたり、少しの段差も登るのが難しいという場面が多くあり、まだ学校はバリアフリーが進んでいないと気づいた。

今後に活かしていきたいこと

生徒たちは、このような想いを寄せてくれました。感想の一部を紹介します。

街で車いすに乗っている方が段差などで困っていたら、助けられるようになりたいと思いました。

自分たちの気づかないところに不自由さがたくさんあり、少しでも気にかけることが大切だと思った。

車いすで段差を越える際、下のレバーを踏みながら持ち上げることによって、力をあまり使わずに押せるので、困っている人がいたらそれをやって手伝ってあげたい。

今回車いすを押してみて、重くて操作しづらいと感じた。1人では移動するのも大変だと思ったから助けが必要な人がいれば手を貸したいと思った。

今回の授業では車いすの細かいところをお教えしてもらったので、たとえば、災害が起きてしまった時に少しでも役に立ちたい。

こういう障がいがある方がいることを知り、自分ができる気遣いを考える。

今回の活動では車いすを押す体験ができたため、将来、車いすに乗っている人で困っている方がいたら助けたいと考えた。

道具などの知識を深めたい。

障がいのある人は意外と身近にいて、その家族も大変な思いをされていると思ったので、もし街中で見かけたら自分ができることを見つけて相手のことを思いやってあげたいです。

デイサービスに興味がでてきました。どのようなものがあるのか知識が全然足りないと感じたので積極的に調べていきたいです。

少しの段差や平らでない路面でも車いすの人からしたら歩きづらい場所だったりするから、そういう小さなことに気づけるようになりたいと思った。

授業にご協力いただきました富永夏生さん、崇之さん、良子さん、ありがとうございました!

次回(1月22日)は、聴覚障がいのある方との授業です。

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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