コラム

誰もが参加しやすいイベントを考える、心を知り合う第2回オンラインイベント(2月10日開催)

2月10日(金)には今年度2回目となるオンラインイベントを開催しました!ご参加いただきました皆さん、ありがとうございました。

富永良子さん久住奈美さんをゲストに迎えて開催したオンラインイベントは、多くの話題が飛び交う素敵な時間となりました。

開催に至った経緯などは、こちらの記事をご覧ください。

当日の様子をご紹介!

2月10日(金)20~21時@オンライン(Zoom)で開催しました。

その様子を一部ですが、今回のコラムにまとめます。障がいのある子を育てる親御さんから見た「誰もが参加しやすいイベント」についてお話を伺いました。ぜひ参考にお読みください♪

前半(ゲストトーク)

富永良子さんは、2人のお子さんを育てるお母さん。上の子は21歳で肢体不自由、胃ろうや気管切開もあり、医療ケアが必要です。きょうだい児である下の子は高校1年生。参考:アナレター記事

久住奈美さんは、茅ヶ崎で活動するチアフル代表。お子さんは5歳のダウン症。茅ヶ崎にインクルーシブ公園をつくりたいと活動が始まり、現在は地域で「交流」できる機会を大切に活動する。

参加するかどうかの決め手

富永さん:うちは寝たきりで大きな車いすに乗っているので、イベント会場のトイレや駐車場など「スペース」を考えます。本人の「行きたい」という気持ちが優先ですが、身体が自分より大きいので、夫が一緒に行けるかなど、総合的に考えて決めることも。初めての場所だと環境が分からないので、下見をしてリサーチをしたり、トイレに行かないで早めに帰るプランにするときもあります。

久住さん:あまり気にせず、参加してみるようにしています。基本、子どもの喜びそうな場所に行きますが、何でもチャレンジさせたい派なので、少し苦手かな〜と思うところも含めてセレクト。「行ってみてダメなら帰ろう」と思っています。うちの場合、ロシアンルーレットのようで、好きかなと思っていても、行ってみると、意外と怖がってしまうことも。

富永さん:うちも。子ども向けだから楽しそうかなと思っても、全然興味がなさそうなことも。ただ、うちの子は、時間差でじわじわ楽しかったのを教えてくれるタイプなので、帰りの車で大爆笑したり、夕食の後にニコニコし出したり、実は楽しんでいるパターンが多いです。

お二人の決め手は、共通して「子どもが楽しめそうかどうか」。ただ、行ってみて意外と楽しめないことや、苦手だと思っていても意外と楽しめることもあるそう。また、イベントそのものだけでなく、家族と車に乗っている移動時間など「お出掛け」の一連を楽しんでいることもあるのだそう。楽しさの表出方法も千差万別。その場で楽しそうに見えることだけが、すべてではないですね。

物理的な環境や時間に配慮することも必要だが、「子どもが楽しめるかどうか」は、親の想像を超えて、行ってみてわかることもしばしば「でもこれって、障がいのあるなしに関係なく、子どもならありますよね」という言葉が印象的でした

イベント主催者からのアプローチ

富永さん:うちの場合、スペース的な問題があるから、トイレの状況や車いすの乗り降りができる駐車場かなど、周辺情報があると嬉しいです。自分たちで調べたり、問い合わせたりすることもありますが、近隣のトイレ情報や休憩所、近くに大きなショッピングモールがある(多目的トイレがある)などの情報があると「行きやすさ」につながります。

久住さん:うちは、周辺情報はあんまり気にしていないけど、小さな子どもが参加するイベントなら、子どもトイレがあると本人が行きやすいかな。あとは主催者側だけでなく、障がいのある人側も「こういうの苦手なんだけど」と伝えることも大事。「障がいがある」ということで遠慮してしまう親御さんも多いのですが、そういう発信も大切かなと。伝えないと何が怖いのか何に困っているのかも伝わらないので。

欲しい情報は、障がいの種類によって少し異なりますが、誰にとっても「駐車場」「トイレ」「休憩所」はイベントを楽しむ上で必要なもの。自分なりのクールダウンができそうな場所があることも、参加のしやすさにつながります。さりげなく、チラシに周辺情報を書くことで、主催者側の配慮やウェルカム感が伝わり、参加がしやすくなると話題が広がりました。

また「子どもはこういうのが好き」という固定観念を持たず、いろいろな個性やこだわりをもつ子がいることも想像することが大切。自分の「想像」以上の「想像」をすることで、相手の世界が見えることもあります。お互いに遠慮することなく話せるように、主催者側から話しやすい雰囲気をつくることも大切かもしれません。

謝る保護者の気持ち、伝えるということ

久住さん:私も「すみません、すみません」と、つい言ってしまうのですが、そうすると、ママたちに怒られるんです。謝る必要ないし、対等にいるべきだって。障がいのある子を育てていると遠慮しがちだけど、「遠慮しなくていい」と言ってくれる人も増えています。 遠慮の壁をこちらからつくってしまうのも違う。健常の子、障がいの子、どちらかが我慢をするのも違う。私も自分の団体でイベントをやっていますが、回を重ねて、徐々にお互いを理解して、仲良くなっていくような時間を大切にしたいと思っています。

富永さん:生活している中で、周りに「すみません」と言いながら暮らしていることに、ふと気づいたことがありました。通院や入院…毎日が大変すぎて、何がすみませんなのかもよくわからない時期もありました。それがあるとき、謝るばかりではなく「情報」として伝えたほうがいいと、落としどころが見えてきたんです。スペースのことや時間のこと、病気の状態など、話すことで自分の理解が深まることもあります。いろいろな方と関わって、コミュニケーションを取ることで、家族自身も成長していける。なので、イベントに参加することはとても大事だと思っています。

もし自分が障がいのある子を育てる保護者だったら、と想像してみましょう。遠慮してしまう気持ちもわかります。イベントの進行を妨げたり、迷惑をかけたくない…とも思いますし、自分の子にも苦しい思いをさせたくない…と考え「だったら無理してイベントに行かなくていいよね」と答えを出すように思います。

話題の中で、「子どもたちが回を重ねることで、最近は一緒に遊べるようになってきた」という言葉がありました。我慢をして遊ぶのではなく、徐々に仲良くなっていく。私たち大人も地域の中でこのようにつながっていきたいなと思います。お互いを伝え合う、想像し合う、その一歩一歩が大切であることを、富永さん、久住さんから教えてもらいました。

後半(みんなで交流)

後半は、ゲストのおふたりとの交流タイムとして、参加者の皆さんから感想や質問などをいただきました。

私はパニック障がいでイベントに行く立場。やはり共通点はあるんだなと思いました。行ってダメだったら、すぐ帰る点やトイレの問題など。行く前に下見にも行っていました。症状が出てしまい、迷惑をかけそうと思ったら、その場から離れて隠れられるように、行動の自由度が高いイベントが行きやすいです。車内は隠れ家になるので、車の置き場所を確保できる場所のほうが行きやすい。お聞きしていて、まさに全部当てはまっていると思いました。自由でいられるかどうかがすごく重要。

私は父が88歳、認知症で車いす。極力イベントに行っていますが、父の場合も同じだなとすごく思いました。障がいや病気がなくても、人は誰でもいずれ高齢者になって、同じ立場になるということも知ってほしいなと。その気づきはすごく大切。地域の中で触れ合える場がつくられることは、きっと、障がいや介護とまだ向き合っていない一般の方にとっても大事だなと思いました。

【質問】いままでに「こういうイベントが楽しかった!」「こういうイベントをやってくれたらいい!」があれば、教えてください。

・自由に参加ができるもの、自分の思うとおりに動けて途中でも帰れるもの。
・見ているだけでもよいなど、それぞれの距離感で参加できるもの。
・お互いの得意なこと、苦手なことなど、自己紹介などで特性を伝えて知り合えるようなもの。
・情報を伝えて、お互いにハッピーに過ごせるのは大切。イベントの中で人と話せる機会や人と関われる機会があるものがいい。地域の一員になれるような、一緒に楽しくなれる催しは嬉しい。

【質問】アクティブではないお母様方に来てもらえるような、響く呼びかけ方は?

・遠慮してしまう気持ちもあると思うので、本当に難しい。
・SNSで活動を見て、勇気を振り絞ってきてくれる方もいる。
・「普通でいなきゃ」「静かにしなきゃ」「迷惑かけないようにしなきゃ」と思う保護者は多い。誰でも参加して大丈夫なのだと感じられるようなイベントをやると参加しやすいのかなと思う(啓発イベント、障がいのあるなし関係ないパレードなど)。

参加者さんからのアンケート(一部抜粋)

・お話を伺うことができてとても参考になりました。ありがとうございました。
・イベントへの参加の仕方や関わり方を、自分で自由に決めていたんだと気づかされました。参加の仕方が浅くても、それなりに深くても、楽にその場にいられたら良いですね。今回も楽しい時間をありがとうございました。
・本当のインクルーシブって何だろうと最近考えていましたが、皆さんのお話を聞けて「特別なことをしてほしいんじゃなくて〜」のお言葉に、とても考えさせられました。ありがとうございました。
・オンラインイベントだったお陰で、父が寝てから参加することができました。親の介護のために藤沢に転居。せっかく藤沢に来たのでいろんな方と交流したり、お役に立ったりするチャンスを作りたいのですが、なかなか難しくて。これを機会に何かできないか、思案中です。
・イベントに参加する際に必要なことが具体的に分かり、お話を聞けてよかったです。
・チアフルメンバーとして見守り感覚で参加しましたが、イベント開催されている団体の多さも改めて知ることができましたし、ニーズは個々に違うものだからこそイベントの開催は多様にできそうだということも学ぶことができました。ありがとうございました!
・障がいがあるお子さんを育てながら素晴らしい活動をされていることに驚きです。 秋葉台公園が県内初のインクルーシブ公園になったとは知りませんでした。 私は学校勤務なので学校の話題が気になりました。

オンラインイベントを振り返って

「妙な特別感」ではない、「あたりまえ」をつくること。障がいのあるお子さんにもイベントに来てほしいと願うことは悪いことではないのですが、いきすぎてしまうと「障がいのある子が来る」がメインになってしまう。当然ですが、子どもたちはそれぞれ好きなことがあり、それぞれ行きたいと思うタイミングが違います。障がいのある子もない子も、一人ひとりが全く異なる、ひとりの子どもです。障がいのある子に来てほしいという発想ではなく、イベントに興味をもった子が何らかの壁に阻まれることなく参加できる方法を考えることが大切。何が壁なのだろうか、そのために何ができるだろうかと考えていけたら、誰もが参加しやすい素敵なイベントができるように思います。

イベント会場の環境を伝えることが参加のしやすさにつながったり、そのアクション自体が「行っても大丈夫かも」という一歩になるように思います。また、主催者側のちょっとした声かけや質問しやすい雰囲気が「誰もが参加しやすい」をつくってくれるようにも思います。オンラインイベント後半でも話題になっていましたが、これは「障がい」だけでなく、性格や年齢など、いろいろな理由で参加しづらい方も同じです。相手の状況を想像してみる、自分の想像を超える世界もあるはずと、もっと柔らかく世界を見てみる。そういった関わりが「参加のしやすさ」につながるように思います。想いが広がる素敵な日をありがとうございました。

次回のオンラインイベントは?

今年度は、偶数月の10日にオンラインイベントを開催しています。次回は、4月10日(月)20時〜です。内容が決まりましたら、ご案内します!

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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