あなたの人生にお邪魔します

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「お邪魔します」「お邪魔しました」を大切に使う

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みなさん、こんにちは。小川優です。

今回は、人と関わるときに考えていることをお話していきます。

 

「人生」と考えたこと

さかのぼること、十数年。「人生にお邪魔する」と、最初に思ったのは、看護学科での初めての実習の時でした。これまでの私の生活を考えたとき、「人と関わる」ということは、意識せずともやっていて、特に「人」というものが好きな私にとっては、家族と話す、友達と話す…常に誰かと過ごし、誰かと笑っている、そんな日々の連続でした。大学で看護学科に進み、実習で患者さんを初めて受け持たせていただいた時、「関わる」という感覚から、相手の人生の中に入り込むような、「お邪魔をする」という感覚に変わったのを覚えています。同じ時間を過ごすという、点が重なり合うだけでなく、ひとりの長い人生の、その中の大事な一瞬に、私はお邪魔をするのだと思いました。

 

お邪魔なのか?

日本語の不思議がここにあります。「お邪魔します」この言葉は、決して、邪魔をするという意味はなく、謙遜なのか、念のため言っておこうという日本人らしさなのかも知れません。邪魔をするつもりがないのであれば、そう言わず「悪いことはしないよ!入るよ!」それでもいいのかも知れません。ただ、この言葉に変わる言葉が見つからないのは、きっと、日本人の私たちにはすごく合っている言葉なのだと思います。礼儀をもって入らせてもらう、真摯に向き合わせてもらう、そんな意味だと思っています。邪魔をするつもりはないけれど、いい言葉なのではないでしょうか?

 

「関わる」と「お邪魔する」の違い

厳密に考えたことはなかったのですが、この際、考えてみると、点と点が重なり合う「関わる」は、お互いに人生があり、そこがその時間つながるような印象を持っています。それに対して、「お邪魔をする」というのは、もう少し、相手の長いフィルムの中に入り込んで、写しだされるスクリーンの中に登場させてもらように思うのです。受け持った患者さんには、患者さんと呼ばれる前の長い人生があり、子ども時代、青春時代、そして、家族と過ごし、仕事をし、長く生きる時間を重ねている。そして、患者さんというのは、ある角度からの姿であり、病気になって患者さんと呼ばれるようになった今であっても、多くは誰かの家族であり、誰かの上司であり、特定の○○さんであるのだと。ただ、少し違うのは、病院にいる時間は、人生の中で、多かれ少なかれ、特別な時間である場合が多いと思っています。命について考えたり、それこそ人生を振り返ったり、特殊な空間で関わる人間関係は、ある意味、特別感のある非日常であるように思ったのです。だから、「お邪魔する」この表現には、私なりの覚悟をもった向き合い方だったのだと思います。

 

そこから学んだこと

実習を通して、人の人生にお邪魔をしたら、日常にある何気ない関わりも「お邪魔をする」という発想に変わりました。今まで、あまり考えていなかった相手の人生を考えるようになったのだと思います。日々の何気ない時間も、何気なく会話した相手のことも、人生という1本の映画の中で、エキストラ以下の存在かも知れませんが、どこか相手のフィルムの中に入るような感覚で生きています。これは楽しい考え方で、そう思うと、今、関わっている相手だけでなく、見たことのないこれまでの時間や、これから先の時間も大切に思うことができるようになりました。それと同時に、「お邪魔します」のあとには、「お邪魔しました」と帰ってくる瞬間も存在するのです。相談支援などをやっている方に多いかと思いますが、重いケースと向き合ったときに、気持ちが引っ張られてしまったり、仕事を仕事と割り切れず、常に考えてしまったりすることもあるかと思います。「お邪魔します」と真摯に向き合う、でも「お邪魔しました」と自分の人生に帰ってくる、その作業はすごく大切だと思っています。相手を思う気持ちが足りないのではなく、人間味がないわけでもなく、お互いに違うストーリーの映画を流しているような感覚です。「お邪魔しました」がなければ、私の話を進めてくれる役者さんがいなくなります。相手の人生から帰ってくること、仕事の自分から帰ってくること、家庭の中の「奥さん」「お母さん」という役割から帰ってくること、自分自身が理想として描く「自分」から帰ってくることも必要なのかも知れません。「お邪魔します」「お邪魔しました」とても、良い日本語だなと思っています

 

小川 優
  • この記事を書いた人

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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