つなげて広げていく世界の輪、デフリンピック【アナレポ#11】

藤沢市内のアナをあける活動を取材する『アナレポ』
今回は10月19日に開催された「東京2025デフリンピックを藤沢から応援しよう!」に参加してきました。このイベントは手話言語の国際デーinふじさわ実行委員会が主催しており、デフリンピック選手たちのトークショー、手話体験をすることができました。
イベントが始まる前から多くの方が開会式を並んで待っていました。その中には、手話で会話をしている方が多くいました。みなさんの心待ちにする気持ちが私にも伝わって来ました!
(取材:飯島 咲音・高校1年)

みんなでつながる開会式
いよいよ開会式が始まりました。最初に登壇されたのは議員の方々で、それぞれがデフリンピックへの思いや、未来への希望を熱く語っていました。どの方も共通して口にしていたのが「共生社会を広げよう」という言葉です。私はその言葉を聞いたとき、なんとなく良い言葉だとは思ったものの、正直なところ、深い意味までは理解していませんでした。
そこで後から「共生社会」という言葉を調べてみると、「性別、年齢、障がいの有無、国籍といった個人の属性に関わらず、すべての人が互いの違いを認め合い、尊重し、助け合いながら、自らの意思に基づいて生き方を決め、社会の仕組みづくりに参加できる社会」とありました。その説明を読んだとき、私は胸の中に2つの感情が生まれました。ひとつは、すべての人が対等に生きられる世界への希望。もうひとつは、それを現実のものにするための大きな難しさです。
実際、違いを認め合うというのは言葉で言うほど簡単ではありません。無意識のうちに偏見を持ってしまったり、自分と違う立場の人の気持ちを想像できなかったりすることもあると思います。それでも、デフリンピックのような場で多くの人が「共生社会」を口にするのを聞いて、理想を掲げるだけでなく、少しずつでも行動していくことの大切さを感じました。開会式は、私にとって単なるイベントではなく、「ともに生きる」という言葉の重さと意味を考えるきっかけになりました。

誰でも楽しめるトークショー
トークショーでは、デフリンピック自転車競技選手の早瀨慶太郎さん・早瀨久美さん、そしてスペシャルゲストとして小山慶一郎さんがお話しされていました。会場の雰囲気はとても温かく、選手の方々が普段どのように競技に向き合っているのかを知る貴重な時間になりました。
オリンピックの自転車競技では、ギアの音やペダルの音など、周囲の音から相手との距離を判断します。しかし、デフリンピックの自転車競技ではまったく別の方法でそれを行います。それが“見ること”による判断です。
といっても、相手をガッツリ見続けるわけではありません。視界の端に入った一瞬の情報だけで判断するのです。これは単なる「視野が広い」というレベルではなく、鍛え抜かれた選手だからこそできる高度な技術なのだと感じました。
トークショーでは実際に自転車に乗りながら、相手がいつ横に来たかを見極めるゲームが行われていました。観客として見ていても、選手の反応の速さと正確さには思わず息をのむほどでした。視野の広さだけでなく、「視界に入った瞬間に判断し動ける能力」は、日々の訓練の積み重ねがあってこそだと改めて感じました。
話を聞きながら、ふと「これも共生社会への確かな一歩なんじゃないか」と思いました。というのも、筆談ではなくリアルタイムで選手の思いを受け取れる環境がしっかりと用意されていたからです。手話通訳者の方々が手話を瞬時に読み取り、場の流れに合わせて、音声でわかりやすく伝える。これは簡単なことではありません。
その技術があることで情報の壁がなくなり、会場にいる全員が同じ瞬間を共有できる。こうした積み重ねが、確実に共生社会へとつながっていくのだと感じました。

未来に向けて
神奈川県聴覚障害者連盟の理事長を務める河原雅浩さんにお話を伺いました。河原さんによると「今回のイベントの最終的な目標は、これまで聴覚障がいのある人と関わる機会がほとんどなかった人たちが、体験を通して聴覚障がいへの理解を深め、共生社会の輪を少しずつ広げていくことだ」といいます。
さらに、手話やデフリンピックを多くの人に知ってもらい、より盛り上げていくきっかけにしたいという思いも込められているそうです。
実際に私自身、イベントで手話を使ったコミュニケーションを体験してみて、普段どれだけ“音に頼っているか”を実感しました。同時に、音がなくても人とつながれる温かさや、伝えようとする気持ちの強さにも触れ、これまでの自分の世界が一気に広がったように感じました。相手の表情や手の動き、間合い…そのすべてが「会話」になる体験は今まで見えていなかった景色を見せてくれました。今日得た小さな気づきが、これからの社会を動かす一歩になるのかもしれません。

ふじさわこたね
〜学生がまちの福祉に出会うアナレポプロジェクト〜
このプロジェクトでは、学生が取材を通して、藤沢の福祉と出会い、それぞれの気づきとともに地域をレポートしています。【プロジェクト詳細】





