豊かな自然に囲まれて、ゆるやかな関わりが生まれるユニバーサル農園【アナレポ#3】

藤沢市内のアナをあける活動を取材する『アナレポ』
今回は、藤沢市獺郷の社会福祉法人光友会でおこなわれている「ユニバーサル農園」を取材しました。
この取組みは、神奈川県と光友会がともに進める事業であり、農業者や障がい者に限らず、幅広い多様な人が気軽に農業に参加できることを大切にしています。「参加」を目的としたユニバーサル農園(農業体験農園)では、豊かな自然を堪能しながら、農業のもつ魅力を体験することができます。
2025年6月17日(火)、この日は畑ではなく、田んぼに集合。綺麗な青空のもと、田植え作業がおこなわれました。取材では、活動に参加して2年目を迎える神奈川ワークショップの利用者さんに心境の変化も伺いました。誰もが参加できるユニバーサル農園では毎週火曜日・木曜日の活動のほかに、土日を中心に家族で楽しめるイベントも開催しています。
(取材:小川 優)

自然に囲まれて
藤沢市獺郷にある「かわうそ農園(以下、ユニバーサル農園)」。バス停「光友会入口」で下車すると、青い空と多くの緑に囲まれた空間が広がっていました。耳を澄ませば、鳥や虫の声、風の音も聞こえてきます。藤沢市北部の長閑な自然はその景色を見ているだけで心が落ち着きます。
どこからどこまでが「ユニバーサル農園」なのでしょう。切り離された区画に福祉施設の田んぼや畑があるのではなく、地元の農家さんの田畑と隣り合ってユニバーサル農園があります。農業は環境自体がインクルーシブであり、あいさつや助け合い、自然と人と人がゆるやかにつながっていけることを知りました。

太陽の下で土に触れる
太陽の下で気持ちの良い風を感じながら土に触れ、作物という命を育てていく。中野健士さん(神奈川ワークショップ・所長)は「農業は誰もが同じ目的を持って同じ立場で活動できる。種を蒔き、芽が出て、花が咲き、そこにできた野菜をいただく。その成長の過程を実感して『楽しい』『嬉しい』という生きる上で大切な感情が自然と出てきたら」と笑顔で語ります。
自然のなかで身体を動かし、仲間とともにつくった作物を食べて美味しいと感じる。そこには人間の根底にある喜びや大きな時間の流れ、作業の先に多くの豊かさがあることを教えてもらいました。

気持ちが変化する
農作業をしていると、ゆるやかに仲間とのコミュニケーションが広がっていきます。また、地元の方とも、あいさつや会話がゆるやかに交わされるようになってきました。この「ゆるやかに」がとても大切であると実感します。
活動に参加して2年目の女性(神奈川ワークショップ・利用者)に心境の変化を伺うと「(ユニバーサル農園に参加するまでは)人と関わるのは不安だったが、だんだんと人と関わることを『いいな』と思えるようになってきた。まだ初めて会う人と関わるのは不安だが、それでも『関われば、きっと楽しい』と思えるようになった」と少し緊張をしながら話してくれました。

地域と福祉がつながる
昨年10月に始まったユニバーサル農園には、ひきこもり状態にあった人や福祉施設に通所する人、子どもや大人、大学生、さまざまな背景の方が参加しています。
ユニバーサル農園では、農業のプロフェッショナルから専門的な技術、技能を教わることができます。神奈川ワークショップには、近隣の農家さんから「うちの畑も手伝いに来てほしい」とお願いがくるなど、農業をきっかけに地域全体がゆるやかにつながっていくのを感じます。人と作物、人と自然、人と人、地域と福祉、多くの交わりがユニバーサル農園にあり、自然なインクルーシブがそこから生まれてくるのが楽しみです。
ユニバーサル農園事業
この事業は、神奈川県と社会福祉法人光友会が連携しておこなっています。ユニバーサル農園事業を実施する「かわうそ農園(獺郷1008ー1)」では、毎週火曜日・木曜日に活動をしています。参加費は無料。継続参加、単発参加、どちらも可能です。今年度は土日開催の農業体験イベントも充実!(詳細はこちら)
