インタビュー

慶應義塾大学SFCと福祉施設がつながるキャップ回収【アナレポ#2】

藤沢市内のアナをあける活動を取材する『アナレポ』

今回は、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)でおこなわれている、ペットボトルのキャップ回収を取材しました。

この取組みは、SFCサステナブルキャンパスプログラムの一つであり、3学部(総合政策学部・環境情報学部・看護医療学部)の学生が福祉施設の皆さんとともにキャンパス内をまわり、一緒にキャップの回収作業をするものです。活動は定期的に実施され、キャップの回収とリサイクルを通して、CO2削減とD&I(ダイバーシティとインクルージョン)を推進しています。

2025年5月29日(木)、その日は環境情報学部・看護医療学部の学生とNPO法人フリークラブ湘南の皆さんが集まりました。繰り返し参加しているメンバーも多く、アットホームな雰囲気のなか、活動が始まりました。

(取材:小川 優)

ゆるくつながる

開始時間が近づくと、プログラムを進める教員や学生、フリークラブ湘南の皆さんが集まってきました。自然と円になり、みんなで自己紹介。回収用の台車を準備し、キャンパス内をめぐるツアーが始まりました。

このプログラムは月1回程度実施し、活動に興味のある学生は誰でも気軽に参加することができます。長く続けられるように、ゆるく参加できるスタイルを大切にしていて、学生たちのなかには、「最初から最後までの参加は難しいが、授業の合間の時間だけ参加したい」と足を運ぶ人もいるそうです。

自分のなかの偏見

参加した理由として「障がいのある人に対する偏見が自分のなかにあると気づいたから」と語ってくれた学生がいました。「自分のなかの偏見をなくしたい」、障がいのある人と表面上の関わりはできるけれど、心のどこかで失礼なことを考えている自分がいたといいます。活動をともにすることで気持ちが変わっていくことに気づき、毎回の活動が楽しみなのだと笑顔を見せました。

3学部の学生はそれぞれが違う目的でこのプログラムに参加しています。リサイクルの研究をしたく参加する学生もいれば、大学以外のつながりや障がいのある人との交流を楽しみに参加する学生もいます。きっかけはさまざまですが、回を重ねることで入り口とは異なる学びや経験をしているのが印象的でした。

活動の変化

活動をともにすることで、双方に変化が生まれてきました。学生側には「ふたりきりになっても会話ができるようになった」「驚かなくなった」「自分の価値観が変化していくことが楽しい」という言葉がありました。また、リサイクル以外の価値やキャップ回収の先にある福祉的作業を知る機会にもなっています。

横山裕介さん(フリークラブ湘南・施設長)は「(キャップ回収後の)色分け作業に対する皆さんの意識が変わった」と話します。学生とのキャップ回収が一つの楽しみになっているだけでなく、施設でおこなう分別作業でも意欲的な姿が見られるそうです。これまでやっていた「分別」という断片的な作業が「回収」から始まる一連の活動になったのでしょうか。今まであったものに意味や価値という彩りが加わったようで素敵だなと感じました。

そこにある価値

大量のペットボトルキャップを回収して分別して…そこで得られる費用は数十円、数百円。人手や時間、その労力を考えたら、手作業でやる価値がないと考える人もいるでしょう。プログラムを進める石川志麻さん(看護医療学部・専任講師)は「経済や効率が優先される世の中で、それだけではない多くの価値に参加する学生が気づいてくれるのが嬉しい」といいます。

福祉的な作業の創出、関わることでの変化。参加していない学生のなかにも、この活動をキャンパス内で目にすることで変化が生まれています。今まで出会わなかった人との出会いがSFCにあります。若者から「コスパ、タイパ」という言葉をよく耳にしますが、授業の合間の短時間でも参加をしたいと思う学生がいることこそ、多くの喜びと価値がそこにある表れだと思っています。

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WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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