コラム

見えない不安と向き合う心

不安と向き合い続け、バランスを崩した私たちの心

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みなさん、こんにちは。小川優です。

今回は、私たちの心に注目してみましょう。

新型コロナウイルスに感染する方が増えてきました。実際に亡くなっている方もいます。数字というものは不思議なもので、多いのか少ないのか、分からなくなってしまうことがあります。それは、おそらく、数字には、比較するという方法はあるもの、多くの場合、受け取り手である私たちの経験や感覚に委ねる部分があるからだと思います。つまり、今回のような経験したことのない出来事に対しては、感染者数が増えているという比較はできるものの、それがどの程度危険なのか、新型コロナウイルスに対する危機感は人それぞれ異なってしまうのです。

相談の中には、家族間で認識が異なり、関係が崩れてしまうということもありました。何気ない毎日の中、子どもが熱を出してしまったことで、同居する祖父母が今までに見たこともない剣幕で怒り「私たちを殺すつもりなのか」と叫んでしまったというエピソードです。

誰が悪いわけでもなく、どれほど、今、私たちが目に見えない恐怖を前にしているかを感じます。立場、年齢、入っている情報が違えば、なおのことです。危機感が違えば、伝え方も表現の仕方も変わってきます。

私は考え方が医療職であり、多くの大学時代の友人が新型コロナウイルスと前線で向き合っているため、今回の事態を非常に重く、命を守ることがこんなにも叶えられない事態がやってきてしまうとは、と思っています。ここで、みなさんと危機感の話をしたいわけではありません。人の心は、恐怖に対してどう左右されるのか。

感染拡大が長期化し、私たちの心も不安にあふれ、バランスを崩しています。バランスを崩す原因は、恐怖感もありますし、人それぞれ危機感が違うということもこの恐怖感に影響を与え、私たちの心を乱しています。感染症に対する不安や恐怖だけでなく、経済的なこと、仕事のこと、生活のこと、家族のこと…いろいろな要素が心をかき乱し、私たちを混乱させます。自分はこういう人間でありたい、という「自分らしさ」のコントロールが上手くできなくなることもあります。心のバランスが崩れているのですもの、当たり前です。

「あたりまえ」、この言葉を、どうにか自分に対して、そして、どうにか相手に対してもプラスの意味で使ってほしいなと思います。「緊急時、一大事には人の本性が見える」という言葉もあります。本性とは何でしょうね。私は、心が混乱して露になったものは、本性かも知れませんし、大きく状況に影響されているのも分かるし、すごく気持ちの理解ができるものではないかと思います。「私たち、人間らしいじゃん」と、もっと人を好きになれる瞬間にしていきたいなと感じるのです。

感染が落ち着くことも、経済が落ち着くことも、明日の生活が整うことも、残念ながら一筋縄ではいきません。ただし、心を守る作業は、いち早くおこないたいです。混乱する自分の心を許すこと、混乱する相手の心の許すこと。私は私の心を守る、そして、少し余裕があるなら、あなたの心も守る。社会の不安はまだ増えていくでしょう。我慢することが多くなれば、心もすり減っていきます。自分の心の守り方を見つけていきたいものですね。

WRITER

小川 優

大学で看護学を学び、卒業後は藤沢市立白浜養護学校の保健室に勤務する。障がいとは社会の中にあるのでは…と感じ、もっと現場の声や生きる命の価値を伝えたいとアナウンサーへ転身。地元のコミュニティFMをはじめ、情報を発信する専門家として活動する。

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